民医連新聞

2013年12月2日

相談室日誌 連載344 医療費で生活破綻 所得再分配の機能を 菅原遥香(山形)

 Aさん(七〇代)は今年四月に脳梗塞後のリハビリのため入院してきた患者さんでした。入院日に娘さんから医療費の相談が入りました。
 Aさんと娘さんは借家で二人暮らし。収入は娘さんのパート収入と、Aさんのわずかな年金でした。Aさんは今年一月に腰椎圧迫骨折で動けなくなるまで、何 十年もリヤカーを引いて、焼きいもやアイスクリームを売り働いてきました。家族はその日暮らしに近い生活で、二人で助け合い寄り添って生きてきました。
 生活保護基準以下の世帯であったため、医療費は無料低額診療で全額免除に。また、娘さんはAさんの扶養控除を初めて申告し、払いすぎていた税金五年分が 還付されました。医療費の心配がなくなったAさん親子は、治療と退院後の生活を考えることに専念できました。そして介護が必要になったAさんはその後、生 活保護を受給して、私たちの法人内の介護付の住宅に入居しました。
 山形県の生活保護の保護率は〇・六三%(全国一・六九%)と全国四三位ですが、最低賃金は六六五円と東京に比べ二〇〇円以上低く、一人当たりの所得も決 して高くありません。映画「おしん」のように、辛抱強くギリギリまでがまんする県民性か…まさにAさん自身がそうだったのではないかと思います。月額一万 二〇〇〇円という低年金のために、倒れるまで働き続けたAさん。自営業者や農業従事者などには傷病手当もなく、救える制度はありませんでした。
 生活保護基準以下、もしくは境界層にある世帯は、いちど病気や障害を発症すると生活が破綻し、医療費の支払いが困難となります。
 厚労省「生活保護基準以下の低所得世帯数の推計について」(二〇一〇年)によると、生活保護基準以下の所得の世帯のうち、生活保護を受けているのは三二%という結果でした。
 Aさんのように生活保護基準以下で生活する人はたくさんいます。すべての人に最低限の生活を保障する「最低保障年金」など、生保以外のセーフティーネッ トも拡充し、必要な人にきちんとお金がまわる「所得の再分配」が機能する社会をめざしていく必要があると思います。

(民医連新聞 第1561号 2013年12月2日)

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