民医連新聞

2013年11月18日

医療の質向上へステップアップを 全日本民医連 QI推進事業交流集会

 全日本民医連第三回QI推進事業交流集会が一〇月二六、二七日、東京で行われ一五六人が参加しました。QIとは「医療の質指標・ 改善」(Quality Indicator・Improvement)のこと。民医連のQI事業は、二〇一一年度から三年連続で厚生労働省の「医療の質 の評価・公表等推進事業」に採択されました。独自に二七指標を設定し医療の質を評価、業務改善ツールとして活用しており、日本の中小病院の典型例として注 目されます。(新井健治記者)

事業の到達点と課題

 集会目的は(1)三年間の事業の到達点・教訓とそれを踏まえた中長期の課題を共有(2)二〇一四年の新たな医療指標の提案と議論(3)参加病院の現状や要望・課題に焦点を当てた分科会で各病院・担当者のステップアップを図る、の三点。
 民医連のQI事業は一一年一月に六領域二五指標で始まり、昨年から七領域二七指標に増えました。参加病院は六〇、七四、八二病院と年々増え、指標の集約 と活用が日常の医療活動の中で行われるようになってきました。
 三年間のデータを分析すると「中心静脈カテーテル関連血流感染」「ケアカンファレンス実施割合」「リハビリテーション実施率」「退院後二週間以内のサマ リー記載割合」で、有意な改善がありました。QIの意義が共有され、浸透しつつあることが分かります。過去三回のアンケートでは、三一病院から一六指標七 三件の改善事例が寄せられました。
 集会全体会では、坂総合病院(宮城)が「入院患者の転倒・転落発生率」改善に向けたとりくみを報告。プロジェクトチームを立ち上げ、手すりをつけたり、 ベッド周囲の安全対策フローチャートと患者用パンフレットを作成するなど工夫を凝らしていました。
 健和会病院(長野)は「ケアカンファレンス実施割合」を改善したとりくみを報告。看護部はカンファを「そこそこ行っている」との印象を持っていました が、データ化すると実際は三〇%弱(一二年)と他院と比較しても低い値でした。そこで「カンファレンス未実施患者リスト」を作り看護部職責者会議で報告し たところ、一三年八月には大きく改善、実施率が五〇%を超えました。
 一方、参加病院は全体の五七・三%(病床数六七%)にとどまっていることや、指標集約率も「職業歴の記載率」など七割に満たない項目があるなど課題が残 されています。また、質改善のための組織を設置した病院は約半数で、ホームページを使った事業の公表も遅れています。今後はQIを管理する組織づくりと ITの活用、測定精度を上げる、データを病院戦略に活かすなどの点で、さらなるレベルアップが求められます。

2014年の追加指標

 来年一月から、現在の二七指標に新たに七指標を追加(左表)、全体で三四指標になります。
 七指標の内容は(1)地域医療を担う中小病院が共通して追求すべき感染管理・標準化・チーム医療に関する指標の補強(2)慢性期医療の質向上を図る (3)DPCデータを用いた急性期病院用の指標、の三点です。また、来年四月からDPC病院用に二四指標を設定します。

分科会で活用方法を議論

 分科会は「基礎講座」、実務担当者・責任者対象の「分析・改善交流」、病院管理者対象の「活用」の三テーマ。基礎講座ではデータを加工して活用するエク セル講座があり、参加者はパソコン持参で操作を覚えました。分析・改善交流分科会では、五病院が「入院患者の転倒・転落発生率」「救急車受け入れ割合」 「患者アンケート『満足している』割合」での改善のとりくみ、QI委員会の活動内容、職員へのフィードバックの工夫などを発表しました。活用分科会では 「中心静脈カテーテル関連血流感染」と、「紹介患者率・逆紹介患者率」での改善を紹介。データを地域連携や病院の経営戦略と結びつけた報告がありました。

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(民医連新聞 第1560号 2013年11月18日)

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