民医連新聞

2013年11月18日

被災地発 医療費免除打ち切りで治療中断や受診抑制も 宮城民医連

 宮城県では今年四月、被災者の医療費窓口負担の免除措置が打ち切られました。宮城民医連が九月に免除を打ち切られた患者を調査したところ、二二七〇人が治療を中断しており、深刻な影響が明らかになりました。

 調査報告は一九事業所から集まりました。県連で最も患者数の多い坂総合病院が調査中のため、その数を合わせると三〇〇〇人を確実に超えると推定されます。風邪などの単発受診を含みますが、当初の予想を超える数でした。
 二二七〇人の中断患者のうち、慢性疾患など治療の継続が必要な人は一〇〇人。その中で病状悪化が懸念され、早急に対応が必要な患者が一〇人いました。県 連が仮設住宅を訪問した際に行った聞き取りと合わせ、気になる事例について報告します(性別・年齢・住居・収入・病名の順)。
 女性九一歳/仙台市仮設/年金/高血圧・認知症疑い…今年三月を最後に来院なし。ケアマネジャーの指示により通院介助をしながら七月に来院。デイサービス時に血圧高値だったため服薬中断していた可能性あり。現在はケアマネ、ヘルパー、仮設住宅のサポート職員がフォロー。生活保護受給を視野に病院SWと相談中。
 男性八〇歳/多賀城市仮設/年金/疾患不明…仮設入居後に不眠が続き受診していたが、免除打ち切りで受診できなくなった。「医療費に通院のためのタクシー代も加えると高くて払えない。今は健康を害さないように気を使っているが、病気をしないかビクビクしている」とのこと。
 男性五五歳/多賀城市仮設/アルバイト月収一四万円/高血圧…「一月からお金がなくて受診していない。血圧も測りたくない」とのこと。無料低額診療制度を説明し受診勧奨した。
 男性六七歳/仙台市アパート/厚生年金/糖尿病…医療費が月七~八〇〇〇円かかるため、薬を間引きしていた。病院の予約を手配。
 県連事務局長の坂田匠さんは「つかんだ数は少ないですが、免除打ち切りで治療が続けられなくなった被災者が実際に出てしまった」と言います。

沿岸部12市町の実態

 県連も加盟する宮城県社会保障推進協議会が一〇月七~八日、気仙沼市、南三陸町など被災した県沿岸部の一二市町を訪問、免除打ち切りについて懇談しました。
 その際、各市町の国民健康保険の診療報酬請求件数と金額を調査。打ち切りの直前と直後の請求件数を比較すると、二〇一三年三月の計三万六六四九件から四 月は三万一一〇八件へ減少。金額ではほぼ半額まで減っており、打ち切りによる受診抑制が顕著でした。
 各市町とも国保財政が厳しい、あるいは破綻しかかっていると語りました。また、震災後は介護認定者(特に要支援)が急増しましたが、南三陸町では津波で 介護事業所が減少、介護サービスの受け皿がないという問題も起きていました。
 医療費の免除は、自治体が窓口負担の免除を行った場合に、免除に要した額の八割を国が補てんする制度。自治体が負担する二割のうち、仮に県が一割を負担 しても、国保財政が厳しい市町村では残り一割を負担するのは難しいことが今回の訪問で分かりました。県連は今後も、国と県の責任による免除復活を求めてい きます。

(民医連新聞 第1560号 2013年11月18日)

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