民医連新聞

2013年11月18日

いのち守る共同をいま 主婦連合会 山根香織 会長 消費税増税 国は暮らし見ていない

 安倍首相は来年度から消費税を八%に増税すると表明。多くの反対の声をおしきるものでした。政府が増税の判断材料とした有識者六 〇人の「集中点検会合」で発言した主婦連合会の山根香織会長は、この増税の矛盾を指摘。同会は「台所の声を政治に」をモットーに終戦直後から運動してきた 老舗の消費者団体です。

弱者に重い負担

 主婦連合会は消費税には導入時から反対してきました。食品などの生活に関わるすべての物にかかる税金は、低所得者ほど負担が大きい逆累進性で不公平な税制です(図)。今度の税率引き上げでは、所得税の減税措置もありません。
 特に懸念しているのは、貧困層ぎりぎりの世帯が、より苦しくなるということです。今年のような猛暑の中でも電気代を気にしてクーラーを我慢した、という声が寄せられています。
 非正規雇用も増えています。一〇〇円、二〇〇円を切り詰めて生活する世帯がすでに今あります。
 苦しいのは消費者だけではありません。中小零細企業は、消費税に経営を圧迫されています。材料費が高くなっても、作った物を取引先に安く買いたたかれる下請けもあります。
 増税されれば、店を閉めなければいけないところも出るでしょう。それらの問題に政府はなにも対策をとっていません。
 一方で大企業は輸出に消費税がかからない戻し税(輸出還付金制度)などの制度で優遇されています。
 それなのに法人税をさらに引き下げることも検討しています。内部留保もたまっているのに優遇しすぎです。この国の税制は弱い人に重い負担を求めていると思います。

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社会保障のためか?

 政府は増税の大義を社会保障財源のためとしています。しかし、社会保障制度をみれば改悪の方向ですすんでいて、その説明がごまかしだと分かります。増税分を大型公共事業にも使われかねません。
 それでも多くの人が、高齢者が増え子どもが少なくなった時を考え、気持ちは反対でも「将来のことを考えれば仕方がない」と思っているのではないでしょう か。これはメディアのキャンペーンの影響が大きいと思います。消費税増税以外の財源確保を検討せず、「みんなで負担するしかない」と国民は納得させられて います。
 しかし、子どもたちの将来のためと思っても、今の生活が壊れてしまっては意味がありません。

有識者会合では

 政府は八月に消費税増税の判断材料として、経済学者など有識者六〇人を集めた「集中点検会合」を行いました。私もその一人として声がかかり、増税は格差と貧困をますます大きくする、と消費者の立場から強く反対を訴えてきました。
 報道では「会合に呼ばれた有識者の七〇%が賛成」、ということばかりが強調されましたが、実際は「条件付き賛成」が少なくありませんでした。「高齢者や 低所得者だけでなく、非正規雇用の多い若者の生活にも配慮すべきだ」という意見も出ていました。
 政府はそれらの懸念を全く考慮せず、増税の方向で動いたのです。

共同で反対の運動を

 大企業が元気になれば、国民みんなが豊かになるという説明は信じられません。低所得者からお金をとる前に、大企業の内部留保を使うなど他の財源確保の手段を考えるべきです。地域から商店も病院も農業もなくなってしまえば、誰が暮らせるのでしょう。
 安倍さんが増税すると表明しても、あきらめてはいません。周りの声を聞いても、増税に反対という人がほとんどだからです。消費増税をはじめTPPなど、 問題の根っこは同じだと感じています。目先の利益や投資家のことばかりを考えているように思います。
 私たち主婦連もさまざまな立場の人や団体と運動する機会が増えました。おかしいと思ったことは、みんなで社会に訴えていくことが大事です。(矢作史考記者)

(民医連新聞 第1560号 2013年11月18日)

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