民医連新聞

2013年10月7日

フォーカス 私たちの実践 災害対応マップ作り 徳島健康生活協同組合

在宅利用者の安否をつかめ 6事業所が共同で情報集める

 地震大国日本。全国で大きな地震の危険性が指摘されています。加えて、今 夏も各地で大雨被害、竜巻被害が相次ぎました。災害発生時、患者・利用者の安全をどう守るかは、それぞれの事業所が抱える課題です。徳島健康生活協同組合 の在宅部門全体でとりくんだ災害対応マップ作りを紹介します。

京都での実践を参考に

 徳島では、東南海・南海地震の危険性が叫ばれて久しく、各在宅事業所の小委員会(ケアマ ネ、訪問看護、通所系)や安全管理委員会で個別に検討しながら、なかなか安全対策がすすまずにいました。しかし、東日本大震災を受け、早急に各事業所の連 携が必要と判断し、災害時対応マップ作りに着手しました。
 参考にしたのは、震災の前年の第一〇回全日本民医連看護介護活動研究交流集会で発表された京都の「訪問看護ステーションひまわり」のとりくみです。それ をもとに東日本大震災から三カ月後の二〇一一年六月、徳島市内にある六つの介護事業所が集まり、共通の災害時対応一覧を作成しました。
 作成手順は、(1)スタッフ間での連絡先の確認・登録、意思統一、(2)各事業所から全利用者(六五五人=当時)の基本情報を持ち寄り、地域別に分類。 重複している利用者の基本情報を整理し、四二五人分(当時)の情報を一覧表にまとめる、(3)位置確認のため、利用者の自宅と地域の避難場所を地図にマー キング、(4)事業所にその地域の地図を掲示し、利用者宅を重症度別にピンでマーキング、の四点。その後、歩いて訪問できるエリア別に、地図と対応一覧の ファイルを作成しました。
 県西部の山間の事業所でも、利用者数は少ないながら、甚大な被害が予想されるため、同じようにファイル作成をすすめています。

地域の様子が見えてきた

 この作業を通じて、改めて利用者の緊急連絡先や避難場所を確認することができました。ま た、複数の事業所が共同で対応一覧表を作り、地図に起こしたことで、他事業所の利用者同士が、実は同じ地域の近隣で生活していることも見えてきました。そ の結果、エリアごとに対応することが可能だと分かりました。
 職員の認識も変化しました。「いつかくるかもしれない災害」という漠然とした思いから、日常活動の中で災害時の対応を意識するようになりました。例えば デイサービスの実施中に災害が起きた時、「どのように避難誘導するか」「家に帰れない時は、どこで安全を確保しながら過ごすか」「家族への連絡はどうする か」などを日常的に考えるようになりました。そうしたことで、「何かあった時は、私たちが利用者さんを守り抜く」という気持ちが強くなりました。
 今夏も台風に見舞われましたが、風雨がひどいのが昼間だったため、利用者と連絡を取り合い、落ち着いて対応できました。しかし、山間部の利用者の情報は翌日に報告があるなど、事後確認になる例もありました。夜間の災害時などの対応とともに、今後の課題です。

リアルな現状把握が課題

 その後も二カ月に一度、会議を開き、利用者情報の見直しを続けています。しかし実際には、新規利用者の追加とともに、介護度の変更や入退院、施設入所、死亡など、情報の見直し作業がかなりの量になります。この作業には公的な報酬はもちろんつきません。
 誰が見ても対応できるような一覧表の作成に努めていますが、災害が発生した際には、数日以内で安否確認ができる体制が必要で、その人手もまだまだ足りません。地域の自治会や行政との協力の必要性も感じており、今後の課題になっています。
 災害対応一覧表を活用しないことが一番の願いですが、実際に起きた時にちゃんと対応できるように、災害を想定した訓練も必要だと感じています。

(民医連新聞 第1557号 2013年10月7日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ