民医連新聞

2002年10月21日

「患者さんの“怒り”と“涙” 国や行政にわからせたい」 /各地の訪問・相談活動に切実な声

 10 月医療改悪は実施されましたが、国や自治体からの通知は不十分。さらに2割負担の通知を、個人単位の収入で一律に行うなど「償還払い制度になったのだか ら」と言わんばかりの不親切な対応も。患者さんにとっては“寝耳に水”です。各地の民医連事業所では「減免の申請はしましたか?」「2割でなく1割になる かもしれませんよ」など、個別の相談にとりくんでいます。

  相談窓口設け対市交渉も 岡山
 【岡山=森近淑恵通信員発】水島協同病院では、10月1日からの医療改悪に対応するため、毎日(月曜から金曜まで)患者さんの「医療相談窓口」を設けています。
 毎日5~6人が相談に来ます。そのほとんどが、医療改悪の内容について知らず、会計での支払い時、初めて負担の大きさを実感されています。1人ぐらしや 少ない年金で生活している患者さんには、深刻な事例も多く、相談に来られた中には「他医院に目の治療でかかっている。夫婦の年金だけが収入源なのに医療費 が高くて生活できない」というものや「抗ガン剤の注射をしたら9770円で、持ち合わせがなかった」などがだされています。「老人憩いの家に集まると、医 療費の負担増が話題でもちきり」の声も。
 寄せられる相談に対しては、医療費の減額申請や償還払いの制度を紹介しつつ、10月15日に対市交渉も実施。医療改悪の被害から住民を守る努力をするこ と、介護保障を改善させることの二点で倉敷市に申し入れを行いました。現場の担当者からは、「住民に不利益をおこさせないよう努力したい」との発言もひき だすことができました。

負担軽減の申請知らせ、すすめて 東京
 【東京発】「知らせてもらって良かったと言われましたよ」。台東保健生協専務理事の公文共宣さんは 「2割と受給者証に記載されていても、実際は1割負担でよい人も相当数いるはずです。2割の受給者証をもって受診された患者さんには、区役所に相談に行く ようにすすめています」と話します。
 台東保健生協は、9月28日に地域社保協で「医療費負担改定」問題について勉強会を行いました。講師の台東区役所の国保課長は「その人が1割負担か、2 割負担かはわかりにくい。区では税をもとに記載しているので、疑問がある人は区役所に来てください」と説明しました。区は厚労省通達にもとづいて、個人と して450万円を超える収入のある人には、2割負担の通知を送っています。しかし中には世帯でみると637万円以下の収入で、1割負担でよい人も含まれま す。これを知って、診療所窓口に2割負担の受給者証を持ってきた人には「区役所に行くよう」声をかけています。
 同生協の管理会議では「医療費の問題で患者から意見が出たケースは日報で全部集中しよう」と意思統一。患者さんの個別の事情にそってきめ細かな問題解決を図るとりくみを開始しました。
 「『なぜ2割負担なのか』の問い合わせが多く、区役所に電話がなかなか繋がらない。国の方針ではこうした乱暴なやり方にならざるを得ない」と公文専務は怒りをにじませます。

  *  *  *

 北区の豊川通り診療所の奥山通弘事務長は、「老人医療高額医療費支給申請書(償還払い申請書)」を区役所からもらってきて、患者宅に配布。「ケアマネやヘルパーが代理で申請しても受け付ける旨の区の了解を取りました」と話します。
 同診療所では、50人の在宅訪問診療の患者さんに10月からの改定内容を知らせ、相談しました。中には10倍以上の負担になる人もいて、訪問診療を続け られなくなる心配のある患者が今の時点で4~5人。外来受診の方が費用がかからないので「車イスに乗せて、なんとか連れていく」と言う家族も。しかし重度 の寝たきりの人では、そんなことはできません。「結局、今回の改悪は病気が重い人に過酷な負担を課す制度」と怒ります。
 また受給者証を持たずに受診し負担割合が分からない場合、2割負担で対応せざるをえない実情もあります。奥山事務長は「なにより患者に知らせ、自己負担額変更などの申請をすすめることが大事」と強調しています。

(小林裕子記者)

「年金でるまでまってくれ」 高知
 【高知発】10月1~4日、高知民医連の各病院、診療所で「10・1改定相談コーナー」を設け、相談 活動を行いました。4日間で111人と対話。窓口での負担増に怒る人、説明を聞いても納得できない人、怒りやとまどいの声などが、集まっています。保険薬 局の窓口では、「年金が出るまで支払いを待ってほしい」と言う人もいます。限度額があるといっても、月十数万円の年金収入しかない世帯にとって、限度額自 体が高すぎるという問題があります。
 受診抑制をさせないために、いまの活動が「勝負」だと考えています。相談の中で特に負担が深刻な在宅酸素療法の患者さんを中心に訪問・面談活動をはじめました。
 面談した72歳の女性は、先月1600円だった負担金が、今月は病院で1万4900円、保険薬局で2000円でした。「負担が増えるのは聞いちょったけ ど…」と涙ぐんでいました。「7000円かかった」という友人の話を聞いて、7000円持って来ていましたが足りませんでした。
 高知県では一、二級の身体障害者には医療費の助成制度がありますが、三級以下の障害者にはありません。今月末に行う「医療一一〇番」の内容や個々の事例をもって、11月からはじめる自治体キャラバンに臨みたいと考えています。

(高知医療生協・武市正隆)

(民医連新聞2002年10月21日/1290号)

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