民医連新聞

2013年9月2日

歴史の真実を知り 未来を変えよう オリバー・ストーン監督 原水禁大会で語る

 映画「プラトーン」などで知られるオリバー・ストーン監督が八月、広島、長崎の原水爆禁止世界大会に初参加、被爆者と交流しまし た。「私は映像を通して、若者に真実の歴史を伝えたい。原爆投下で戦争が終わったという通説も全くの嘘。本当の歴史を知り、日本は米国の属国をやめて主権 を取り戻すべきだ」と呼びかけました。(新井健治記者)

 ストーン監督は米国現代史の真相に迫ったドキュメンタリー「オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史」(NHKBSで放送)を制作。早川書房から同名の著作が出ています。
 米国政府は戦後、「原爆投下が戦争終結を早め、日米両国民の多数の命を救った」と宣伝、この「神話」(ストーン監督)をいまだに多くの米国民が信じてい ます。ドキュメンタリーはマッカーサー元帥ら当時の軍幹部の「日本の降伏は秒読み段階で、原爆投下は戦略的に必要なかった」との証言を紹介。真の目的は旧 ソ連のけん制にあったことを、新たに公開された公文書などから明らかにします。
 「神話があったからこそ、米国は核兵器を肯定し核軍拡競争を続けることができた」とストーン監督。「日本政府も同じように被爆の事実を隠した。日米両国民は騙されてきたのです」。

被爆者の話を聞いて

 ストーン監督はドキュメンタリーを共に作ったアメリカン大学歴史学科のピーター・カズニック准教授と、被爆者に聞き取りをしました。カズニックさんは一八年前から、毎年八月に学生を広島、長崎に連れてきて原爆を研究しています。
 「話を聞いて驚いた。被爆者は差別され、まともな医療を受けることもできなかった。日米両政府が原爆のあらゆる情報をタブーにしたからだ」とストーン監督。
 「被爆者は恐ろしく悲しい経験をした。それでも復讐の念に囚われることなく、核兵器廃絶の声をあげ続けてきた。原爆を絶対に忘れないという意志、記憶を継承しようとするパワーに感動した」と言います。
 原水禁世界大会では、被爆者や青年と対談しました。「憲法九条がありながら、日本は世界第四位の軍事大国であることをご存知でしょうか?」と会場に質 問。「日本政府は米国の兵器をたくさん買い、戦費まで負担してくれる。米国は日本を対等なパートナーではなく、同盟国の一部として便利に使っているだけ」 と指摘。「日本には高い経済力と素晴らしい文化がありながら、米国の従属国になり、政治的主権を持っていないことが奇妙なのです」と問いかけました。
 監督と対談した広島県被団協副理事長の吉岡幸雄さん(84)は、一六歳の時に爆心地から一・七㎞で被爆。一緒にいた父親は三カ月後に原爆症で亡くなりま した。「監督の言葉に勇気をもらった。核兵器廃絶の決意を改めて強くしました」と語ります。

知を糧にたたかおう

 ストーン監督は広島、長崎に続き沖縄も訪問、米軍基地を視察し、辺野古新基地建設に反対する名護市の稲嶺進市長らと懇談しました。
 「オバマ大統領は私たちの期待を裏切り、アジアの軍事強化に乗り出した。沖縄をはじめ、韓国、フィリピン、台湾の基地を再編、『中国封じ込め』を狙って いる。この戦略に沿い、安倍首相は憲法九条を変え、米国の戦争に荷担しようとしている」と鋭く指摘。
 四〇代まで原爆投下の真の目的を知らなかったというストーン監督。「米国でも大手メディアはくだらない娯楽番組しか作らないし、スポンサーはまじめなド キュメンタリーにはお金を出さない。でも、私は学習を続けて意識を変えることができた」と歴史の真実を知ることの大切さを強調。
 「安倍首相は従軍慰安婦も南京大虐殺も認めない。日本政府も、戦時中にアジア諸国にしてきた加害の歴史を隠そうとしている。若者には、たとえ残酷であっても本当のことを教えてほしい」と訴えました。
 「ドキュメンタリーで強調したのは、歴史が変わる瞬間がいくつもあったということ。歴史の真実を知れば、違う未来をつくることができる。知を糧にアメリ カ帝国主義とたたかおう」―。最後に「FIGHT」との言葉を使い、世界大会の参加者を励ましました。

(民医連新聞 第1555号 2013年9月2日)

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