民医連新聞

2013年8月19日

自由と人権奪う自民党改憲案いま声をあげるとき!! 「明日の自由を守る若手弁護士の会」 黒澤いつきさんに聞く 憲法の奥深さ若い人にも

 次号から、憲法を学ぶ連載を始めます。書き手は、「明日の自由を守る若手弁護士の会」の皆さん。自民党政権が「九条の改正」に言 及し、憲法改正に意欲を見せる中、その危険性を広く知らせようと結成したグループ。連載スタートを前に、共同代表の一人、黒澤いつきさんに聞きました。 (聞き手・丸山聡子記者)

危機感に突き動かされ

現行憲法(99条)
「天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」

自民党改憲案(102条)
「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」

 現行憲法をひっくり返す自民党改憲案に危機感を抱き、二六人の呼びかけ人で今年一月、「明日の自由を守る若手弁護士の会」を立ち上げました(八月現在、会員二五八人)。
  護憲や平和の団体が数ある中で、私たちが新たな団体を立ち上げたのには理由があります。何より、自民党改憲案の内容に衝撃を受けたからです。
  日本は「立憲主義」の国です。「立憲主義」とは、国家権力が国民の人権と自由を奪うような専制的な政治を行わないよう、憲法によって国家権力の権限を制限 し、監視する、という考え方です。人権や自由を求める世界の人々のたたかいが到達した考え方です。
  ところが自民党改憲案は、この立憲主義そのものを一八〇度転換しようと言うのです。憲法を「権力が守らなくてはいけない(権力を縛る)もの」から、「国民 が守らなくてはならない(国民を縛る)もの」へ変える内容です()。今までは、憲法によって「国家権力が国民の人権 を侵害すること」は禁じられてきましたが、自民党案では、憲法の名で「国家権力が国民の人権を統制できる」ようになるのです。このような「立憲主義」から の「脱却」は、法律の専門家である弁護士として、見過ごすわけにはいきません。
  もう一つは、重大な局面にもかかわらず、マスメディアがこれを正面から報道しないために、多くの国民が改憲案の内容すら知らないままでいることに、危機感を覚えたからです。
  既存の護憲団体の運動は、残念ながら私たちの世代には広がっていない。ならば私たちが、憲法を読んだり考えたりしたことのない同世代の人たちに、憲法の素 晴らしさ、それを変えようとしている自民党改憲案の内容を知らせていかなければ、と考えたのです。SNSを使ったり、おしゃれなチラシを作ったり、街頭で 紙芝居をやったり…と、私たちのやり方で。

自由を守る、人権を守る

 会の名前は、九条を守りたいというのはもちろん、それにとどまらず「自由を守りたい」という気持ちでつけました。今はこうして自由にモノを言うことがで きますが、自民党案が通ったら、それさえもできなくなる。それぐらいの重大な中身です。憲法で保障されてきた自由・平等、基本的人権が危機にさらされてい ます。九条の問題では意見の違う人とも、「自由を守る」という一点で、広く手を結んでいきたいです。
 「改憲が話題になっているけど、自民党の改憲案、読んでみない?」から始めたい。若い人に読んでもらうことを意識して作ったリーフレットは、すでに一三万部超を発行しました。

憲法のもつ豊かさ

 学生時代に憲法を学び、憲法の豊かさ、奥深さに魅せられました。九条や二五条はよく知られていますが、ぜひ憲法前文はじめ全体を通じて読んでみてください。人権規定など多彩で、憲法を通じて今の社会を考えることができます。
 私が弁護士としてかかわった裁判でも、今の教育のあり方から思想・信条の自由の問題、パワハラなど働き方のことまで、すべて憲法とつながってくる。私たちの国の憲法はそんなすばらしい内容だということを、多くの人に伝えたい。
 若い人たちの中には、憲法どころではない閉塞感があふれています。生活保護バッシングや在日外国人へのヘイトスピーチのように、弱者を見つけて、「自分 たちが苦しいのはあいつらのせいだ」とバッシングする。これは、歴史が繰り返してきたことです。これを乗り越えるのは、容易ではありません。
 そういう今だからこそ、国家が権力を振りかざして私たちの人権を踏みにじるような憲法にするのではなく、今の憲法が目指す、一人ひとりが尊重され、自らの意見を主張できる社会の実現のために、私たちは声を挙げたいと思います。

(民医連新聞 第1554号 2013年8月19日)

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