民医連新聞

2013年8月5日

社会保障制度改革 推進法はどこまで来たか (1)生活保護 先行する切り捨て 保護基準引き下げの影響大きく

 「社 会保障制度改革推進法」の具体化を社会保障制度改革国民会議がすすめています。とりまとめ期限の八月二一日に向けて、七月一二日の会合で「論点整理」が出 ています。国民の「負担増」と「給付抑制」を同時にすすめる内容で、推進法の謳(うた)うとおり、社会保障の基本を「自助(自己責任)」とする姿勢がハッ キリ。推進法は社会保障をどんな風に変えようとしているのか―。知っておきたい点を連載で。一回目は生活保護です。(木下直子記者)

 政府与党は、国民会議が出す最終報告書をもとに、医療・介護・年金などの見直しを行うとしています。しかし、そのとりまとめを待たずに先行しているのが、生活保護分野の改悪です。
 通常国会に上程された生活保護改悪法案は、反対運動もあり、廃案になりました。しかし、生活保護基準引き下げは二〇一三年度予算で決まっており、八月か ら実施に。受給者には、今年度から三年かけて基準が見直されることや、母子や障害者加算、期末一時扶助などの改定通知が届いています。
 引き下げは平均マイナス五・八%。子どもを抱えた多人数世帯が最大一割。民医連の受給者実態調査でも、従来の基準額でさえ「健康で文化的な最低限度の生 活」には不十分と判明。引き下げは受給者の命を脅かしかねません。

基準引き下げの影響

 基準引き下げの影響は受給者以外にも及びます。低所得者向けの減免制度の適用基準は、生活 保護基準をベースに、「その一・●倍」などと定められているものが多く、生活保護基準に連動しています。これまで減免制度が利用できていた低所得世帯も 「適用対象外」になる恐れがあるのです。
 具体的には、地方税の非課税基準や就学援助など三八種類です()。 政府は、「できる限り影響を出さない」としますが、厚生労働省は各制度の担当部局に文書を出す対応にとどめ「適切な扱いがされるものと考える」というばか り(七月二四日、中央社保協への厚労省レクチャーで)。また、中国残留邦人やハンセン病療養所入所者関連の支援給付などは引き下げが確定しています。
 このほかに、最低賃金や無料低額診療事業も生活保護基準を参考にしています。無低診を実施している事業所で利用患者にあてはめてみると、全額免除だった 患者に半額負担が発生したり、対象から外れる人もいたとの報告も。

生活保護改悪法案の再提出も

 田村憲久厚労大臣は、生活保護改悪法案の再提出を明言。親族の扶養義務の強化など申請を妨げる「水際作戦」を合法化する生活保護法改正法案と、最低賃金以下の「中間的就労」でもよしとする「生活困窮者自立支援法」の二法。
 全日本民医連は、改悪法案を完全廃案にすること、基準引き下げの影響をつかみ発信すること、当事者の不服審査請求への協力など運動の強化を呼びかけてい ます。

◆引き下げで影響を受ける制度

保育料免除/児童保護費等負担金/小児慢性特定疾患児日常生活用具給付/養育医療給付/結核 児童療育給付/病児病後児保育の利用料免除/児童入所施設措置の徴収金/障害児入所支援の措置/養護老人ホームへの入所措置/介護保険の利用者負担額軽減 /要保護世帯向け不動産担保型生活資金の貸付上限/介護福祉士等修学資金貸付事業等の生活費加算/戦傷病者の療養手当/国民年金保険料免除/国保、後期高 齢者医療の適用除外/同・一部負担金減免/介護保険料や高額介護サービス費等/自立支援医療の負担上限/就学援助の学用品費/特別支援教育就学奨励費/幼 稚園就園奨励費/私立高校等授業料減免、ほか9事業
【地方単独事業のため判断は自治体等に】災害共済給付の共済掛金の一部免除/高等学校等奨学金事業/大学等授業料減免等/NHK受信料免除
【連動する制度】中国残留邦人等への支援給付/国立ハンセン病療養所等入所者家族生活援護費/ハンセン病療養所非入所者給与金(援護加算分)

(民医連新聞 第1553号 2013年8月5日)

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