民医連新聞

2013年7月1日

フォーカス 私たちの実践 回リハ病棟で排尿自立支援 岡山・健寿協同病院 排尿の自立は在宅復帰の要 個別の支援計画たて6割強が自立

 在宅復帰を目指す回復期リハビリテーションの課題の一つが排尿の自立です。岡山・健寿協同病院の回復期リハ病棟では、三年前から、多職種で排尿の自立支援にとりくんでいます。介護福祉士・大森美智子さんの報告です。

 病棟の患者の排尿状況は、入院時に完全オムツの人は三六%、なんらかの失禁状態にある人は 七二%でした。一方、退院後に在宅で介護をする家族の大半が、排尿の自立や排尿介助量の軽減を望んでいることが分かりました。排尿の自立が在宅復帰の課題 です。そこで、医師、看護師、介護職、リハビリなど多職種で排尿自立支援にとりくむことにしました。

24時間排尿記録を元に計画

 排尿のパターンは、一人ひとり違います。患者と接する機会が多い介護職を中心に、「排尿管理手順」(図1)を作りました。
 まず入院時に、更衣やトイレ動作、排尿コントロール、尿意を伝えられるかなど、七項目で排尿について評価をしたあと、二四時間毎時排尿記録をとりまし た。排尿記録で、「一日の排尿回数」「一回の尿量」「残尿量」「一日の総尿量」「動作」「認知」が分かります。
 それを元に、多職種でカンファレンスを行い、個別の排尿自立計画を立てます。野球のスコアをヒントに、排泄の状況をスコア表に記録(図2)し、共有します。この際、介護職の“気づき”を重視。「分析的に患者の訴えを聴く」「どこが不自由なのか考える」「環境改善も提案」というスタンスで記録し、共有しました。必要に応じて支援計画は見直します。

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*症例

【七〇代女性、大腿骨頸部骨折、認知症】
 来院時はつなぎ服を着用し、介護者への抵抗も強かった。つなぎ服をやめ、排尿記録を実施。日中は失禁してからのコールが頻回で、夜間も頻尿で失禁を繰り返す。
 ポータブルトイレに誘導すると自然排尿すると分かり、オムツ離脱が可能と判断。声かけをしながらポータブルに誘導して自然排尿を促し、尿意の回復を目指 した。一日八回の排尿誘導と、股関節周囲筋増強訓練や立位保持訓練、下衣着脱の動作訓練を実施。一カ月半で日中は八割がた尿意を訴えるように。介助で排尿 が可能になり、オムツを離脱して退院した。
【七〇代男性、脊椎圧迫骨折、右不全麻痺】
 骨折による腰・背部の痛みが強く、失禁状態。麻痺のない左手で下衣着脱動作が可能であることに着目し、下肢筋力訓練、立位保持訓練に加え、下衣着脱動作 や排尿・排便後清拭訓練を実施。介護者は積極的な声かけを心がけた。
 当初は介護者の声かけに無反応だったが、「トイレでできたなぁ!すごい!」と声をかけると、笑顔を見せる。自信がつき、自らトイレに座るように。二カ月 で尿意が回復し、排泄が自立。車いすへの自力移乗も可能になり、生活全般に積極的になって退院した。
【八〇代女性、慢性硬膜下血腫術後の左不全片麻痺、認知症】
 奇声や脱衣、オムツいじりなどがあり、失禁状態で頻回に更衣が必要だった。排尿間隔が長く、膀胱尿量五〇〇ccでも尿意を訴えないとわかった。トイレに誘導すると多量の排尿があった。
 膀胱の機能は失われていないと推測し、尿意の回復を目指した。定時に誘導してトイレでの排尿を繰り返したのち、膀胱内の尿量が三〇〇ccを超えていたら 尿意を問うようにした。尿意が回復してからは随時呼び鈴を携帯し、職員に知らせられるよう工夫した。三カ月で尿意がほぼ回復。オムツいじりなどの問題行動 も消失した。

本人、家族の負担軽減へ

 排尿記録をとり、パターンを把握しただけでは、失禁は治りません。一方、排尿の自立が生活全般の改善につながることもあります。患者さんへの声かけを重視し、会話内容も多職種で共有しました。
 当初の目標は「入院時にオムツ使用の患者さんのうち、五〇%のオムツ離脱」としていましたが、初年度で六三%、次年度は六九%が自立できました。個別支 援は手がかかりますが、患者さんはもちろん、退院後に在宅で介護する家族の負担軽減にもつながります。やりがいを感じています。

(民医連新聞 第1551号 2013年7月1日)

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