民医連新聞

2013年7月1日

政治を語ろう!2013参院選 藤末衛全日本民医連会長に聞く “いのち”を守るための選択をしよう

  参議院選挙(七月二一日投票)に向け全日本民医連は「提言」を発表しました。医療や福祉などの社会保障制度の大改悪や、医療崩壊を招くTPP交渉参加を掲 げる安倍内閣に「人の命や安全を犠牲にせずに福祉を充実しながら財政危機を乗り越える選択はある」と、訴えています。藤末衛会長に聞きました。(木下直子 記者)

民医連はなぜ選挙にこだわるのか―

―本題に入る前に。「とにかく現場は忙しく課題も沢山。そんな中でなぜ民医連は政治の話をするの?」という疑問を会長はどう思いますか
 現場は、患者さん、利用者さんのことで精一杯という状況、よくわかります。でも、だからこそ選挙の時期に「医療と政治の関わりを考えてみませんか?」と呼びかけたいのです。
 私たちが医療や介護の技術を高める努力をするのは、それが医療や介護を必要としている患者・利用者さんの幸せにつなげたいからですね。その仕事が、政治に阻まれている現実があります。
 たとえば「手遅れ死亡事例」にみられるような医療を受ける権利の侵害や、介護難民の発生などです(別項)。これらは、政府が医療や介護に財政を投入することを避けているために起きています。
 いまの財界は、働く人の賃金や、医療・年金・介護などの費用を「コスト」として捉えています。「国際競争の資金が、医療や介護に取られてしまう」と、国 家財政と社会保障を対立的に見る思考から抜け出せず、それを政府が容認しています。
 政治の最大の仕事は「どの分野にどれだけ税金を使うのか」「何を大事にするのか」の順番を決めること。ですから、政治が医療や福祉を大切にしない限り、私たちの現場の矛盾は解決しません。
 「仕事に打ち込みたい」「専門性を高めたい」という仲間ほど、政治に目を向けてほしい。それが、目指す医療・介護のためになるのです。

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民医連が「提言」した内容は―

―参議院選挙に向け、民医連は「提言」を出しましたね(別項)。そのコンセプトは?
 「医療と介護を『もうけの道具』にしない選択を!」と呼びかけたいと考えています。
 安倍内閣は「骨太方針」を閣議決定しました。社会保障制度改革推進法の具体化も始まっています。推進法は昨年の民主党政権時代に自民・公明との三党合意 で成立しました。社会保障について「自助」や親族と住民間の助け合いの「共助」といった自己責任を基本にし、憲法が国に命じた責任(公助)を放棄する考え 方です。
 たとえば、新しい治療は公的医療保険に入れず、混合診療に。「自費の治療は民間の医療保険に入って受けてもらう。そうすれば企業の利益になり、成長戦略 の一端になる」といった議論がされています。「消費税率引き上げは社会保障のため」と言っていたのに社会保障を削る約束違反も。「国民の命にかかわる社会 保障を危機に陥れても、企業に儲けてもらう」というのが現政権の姿勢です。TPP参加も、日本の公的医療保険を破壊します。
 福島の原発事故が収束していないのに、日本の原発を「世界一安全」として輸出をすすめている問題もありますね。よく政府は「国益」という言葉を使います が、「国益」が国民の圧倒的多数の利益なのか、その国で権力を握っている人たちの利益を指すのか、見極める必要があります。今度の選挙では、「人間の安全 と命を犠牲にしない」という選択ができるかどうかが問われている。そこで四点の提言にまとめました。
 一点目は、受療権が侵害されている事実や、医療を市場原理に委ねれば、結局医療費高騰につながることを示し、公的医療保険制度の堅持を強調しました。二 点目は、国民の人権を守る雇用環境や、生活保護制度の充実を求めました。賃金減少や非正規労働の増加は、社会保険財政もひっ迫させます。三点目は、国民の 健康保持や医療介護のネットワークづくりの推進を政府が本気でとりくむべきことを指摘。四点目は財源確保について、十分余力のある大企業や富裕層にもっと 負担をシフトするよう求めています。

 四月に「生活や仕事、社会を語り合う、一人一人の選挙にしよう」と呼びかけたアピールを、民医連の仲間に向けて出しました。選挙を考えるためのDVDや民医連新聞号外などの資料も届けています。
 いま「人にやさしい日本をつくるには?を学べる紙芝居を作成し、職場や共同組織の集まりで上演。社会保障やTPPなど、盛り込んだデータに反応が多く、 次にすすめないほど話になる」(北海道)、「『選挙に行こう』ポスターをつくり職場に張り出す」(長野・写真)など各地でとりくみが始まっています。
 「大砲(戦争)かバター(福祉)か」と国のあり方を問う議論は昔からありました。ファシズムは経済恐慌の打開を軍事進出に求めました。社会保障の充実こそ最大の戦争抑止力でした。今度の参議院選挙は、子や孫にまともな日本を渡せるかどうかがかかっています。

【民医連の提言】
提言1「まともな医療と適正な医療費は、公的医療保険制度でこそ」
提言2「人間の尊厳を守る労働と、生活の保障を国の責任で」
提言3「安全・安心の保健・医療・介護ネットワークを地域で実現する」
提言4「税金と企業、国民の応分の負担で必要な財源の確保を」

 

選挙を考える資料!
◆藤末会長アピール
◆学習DVD「2013年選択の時」
いのち輝く明日のために
◆民医連新聞号外2種
『政治と本気で向き合う。』
『私たちがめざすべき未来。 本当はあぶない社会保障制度改革推進法』

(民医連新聞 第1551号 2013年7月1日)

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