民医連新聞

2013年6月3日

相談室日誌 連載372 「家に帰りたい!」 思いをささえる制度とは! 松本沙姫(兵庫)

 Aさん(五〇歳代女性)は、要介護認定3で生活保護を受給する身体障害者(一級)。「ポータブルトイレが自立してから自宅へ帰りたい」との意向で当施設へ。その前の病院では乳がん、がん性髄膜炎への転移ありと診断されているターミナルの利用者でもありました。
 入所中に病状が進行しADLも低下。目標のポータブルトイレの自立は困難でしたが「自宅に帰りたい」という思いに添うように、独居できる在宅サービスを検討しました。
 生活保護で身体障害者一級のAさんが介護サービスを利用する場合、介護保険より自立支援法が優先されます。Aさんの「毎日お風呂に入りたい」という希望 に添ったプランを作るには、自立支援法のサービスだけでは足りません。
 市の障害福祉課に問い合わせると「足りない分は、介護保険サービスを併給できる」との説明。それを受けてプランを調整しましたが、後で「説明は誤りで あった」と訂正があり、サービスの組み換えを余儀なくされました。
 厚生労働省の通達には自立支援サービスで足りない場合は、介護保険サービスで補えるように書かれています。しかし、表現が曖昧でサービスの利用範囲を制 限する解釈もできます。実際に自治体では、要介護認定の限度額内のサービスしか受けられないしくみとなっていました。
 Aさんは医療扶助の訪問看護を使い、支給限度額を超えない最低限の介護サービスを組んで自宅に帰ることに。家族が泊まり込んで介護をすることになりまし た。自宅に戻ったAさんからは生きる意欲を感じる言葉や、生活に満足する様子も伺え、今後もご本人の意向に沿った支援をしたいと思いました。
 「多様なニーズに応じ、自己決定のもとにサービスを選択できる」と謳って導入した介護保険。しかし現実は訪問サービスの範囲が制限され、在宅復帰が困難になるケースも出る制度になっています。
 「ただ生きている」生活ではなく、人間らしい生活ができるように、行政に対し、引き続き実態に基づいて必要なサービスが支給されるよう求めていかなければならないと思います。

(民医連新聞 第1549号 2013年6月3日)

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