民医連新聞

2013年5月20日

いのち守る共同をいま 全国医師ユニオン 植山直人代表 医師はヘトヘト 国民の命が守れる 労働条件に

 医師の業務負担は増え、医師の健康をむしばんでいる―。昨年全国医師ユニオンなどが行った勤務医労働実態調査からこんな実態が浮き彫りになりました。医師の労働実態と解決の展望について、全国医師ユニオン代表の植山直人医師に聞きました。(丸山聡子記者)

勤務医の労働実態調査

 全国医師ユニオンは、医師の過労死・過労自死が相次ぎ、医療崩壊が深刻化するなかで、二〇〇九年に発足しました。医師の労働条件改善とともに、日本の医療再生をめざしています。
 医師不足が叫ばれ、中央社会保険医療協議会(中医協)も「勤務医の負担軽減」を掲げています。実際の勤務医をめぐる状況を知りたいと、医労連などにも呼びかけ、勤務医労働実態調査にとりくみました。

業務負担増の背景

 調査は、二一〇八人から回答を得ました(男性一六六一人、女性四四七人)。まず衝撃だった のは、「業務負担はこの二年間でかわったか」との問いに対し、「増えた」が四四%で一七%だった「減った」の二・五倍にのぼったことです。中医協の言う 「負担軽減」は現場に届いておらず、むしろ悪化しているのです。
 この傾向は、診療科、地域の別なく共通でした。厚労省の「医師不足の解決策は、医師の“地域的な偏在”と“診療科の偏在”の解消」との主張は、実態とかけ離れています。
 深刻なのは当直の問題です。医師の長時間労働の大きな原因のひとつです。調査では、交代制勤務は「なし」と答えた人は約九割、その結果、当直明けでも一 日勤務をしている人は七九%、半日勤務が一五%で、当直明けの勤務がない人はわずか六%でした。
 私も経験がありますが、当直時の明け方に重症の患者さんを診ていたりすると、昼間の外来はボーッとしてしまったり、処方のミスも多くなってしまいます。
 問題なのは、実際には通常と同じ業務をこなしているのに、通常業務をしなくてよい「宿直」扱い(通常賃金の三分の一でよい)とされていることです。残業代を全額請求している人は三割でした(図1)

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「やめたい」6割

 長時間過重労働の結果、約半数が健康不安を感じています。精神的ストレスは、「治療中」「強いストレスあり」「ストレスを感じることが多い」が合わせて七割超(図2)。最近「やめたい」と思うことがある人が六割というのもうなずけます。
 この現状を早急に解決しなければ、医師のみならず国民の命と健康が犠牲になりかねません。

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8割が「医師不足」実感

 以上のような現状を解決するためにも医師不足の解消が急務です。自院で医師不足を感じてい る人は八三%。六〇代で当直を担っている医師も二割にのぼります。医療過誤の原因(複数回答)では「医師の負担増」「時間の不足」「スタッフの不足」「過 剰業務による疲労」が挙がっています。

*    *

 日本では長年、「医師は聖職」であり、「自らを犠牲にして患者さんに尽くす医師」が理想とされてきました。患者さんの急変に、勤務時間を過ぎても仕事を 続けるのは、医師として当たり前です。しかしそれは、「残業代を支払わなくて良い」ことにはなりません。医師も労働者として、きちんと保障されるべきで す。
 当直勤務の賃金を正当に払い交替制勤務にするには、どれぐらいの予算と医師数が必要かなど、具体的な政策提言も行う予定です。
 医師が心身ともに健康に働き、患者さんの命と健康が保障されるよう、皆さんとともにがんばりたいと思っています。

お知らせ

シンポジウム「『日本の医療・福祉の危機とゆくえ』~参議院選挙へ向けて政策を問う~」(ドクターズ・デモンストレーション実行委員会主催)
5月26日13時~16時半、東京・星陵会館
詳しくはドクターズ・デモンストレーション実行委員会ホームページ
http://dd2011.union.or.jp/614

(民医連新聞 第1548号 2013年5月20日)

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