民医連新聞

2013年5月20日

相談室日誌 連載371  飛び回る日々の中で感じているのは― 宮本麻子

 新年度が始まって、相談室は春をのんびり感じる余裕がないくらい飛び回っています。
 「景気が良くなっているなんて全く感じない。この先、自分たちの生活が良くなるなんて思えない」。面接場面での患者さんの家族の一言です。今、テレビで は日本の景気が回復傾向だと盛んに報道しています。しかし当院に来る患者さんたちは無保険や低収入、保険料滞納・介護保険料増、家や身寄りがない、など深 刻な問題を抱えている人が少なくありません。
 最近では、仕事で家族をささえなければいけない働き盛りの年代の人が、家族や自らの病気が理由で生活困難になるケースがあります。自身の生活スタイルが 大きく変わってしまうだけでなく、家族の関係性まで不安定になることも。人生を見直さねばならない現実に直面する患者さんと関わる責任の大きさに、とまど うことも少なくありません。同時に、病気になった人がなぜこんなに追い込まれていくのか、制度は誰のものなのか、考えさせられます。
 また、介護保険料滞納のペナルティーとして、利用料が三割負担となった患者さんが複数います。「ペナルティー」とはなんでしょうか?「保険料の支払いが 後回しになることが、そんなに責められることなのか」という疑問も沸きます。中には十分お金があるのに、払わなかった人もいるかもしれません。しかし、私 が相談にあたった人は無年金や低収入、家族の病気や失業など、本当に厳しい状況の人ばかりでした。
 厳しい中でもなんとか生活してきた人が、介護が必要になり「滞納していたから利用料は三割です」と言われても、払えるわけがありません。三割負担が大き くて必要なサービスを導入できないまま、在宅退院を余儀なくされるケースもありました。ケアが不足するため状態が悪化し「すぐにまた、入院が必要になるの ではないか」と主治医や看護師も懸念しています。
 ほかにも同様のケースがあり、家族や地域包括支援センターとも相談中です。
 このように目の前には課題が山積していますが、悩んだり迷ったりしながら患者さんといっしょにすすんでいきたいと思います。

(民医連新聞 第1548号 2013年5月20日)

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