民医連新聞

2013年4月15日

シリーズ 働く人の健康 ~中小業者~  経営難、高すぎる国保料…“医療は遠い”中小零細業者

 日本の産業を底辺でささえ、暮らしを守る中小の商店や工場。多くは低賃金で休みなし。健康診断も十分に受けられず、不調を押して働き、無理を重ねていることも珍しくありません。中小業者の健康は―。(丸山聡子記者)

 長引く不況のもと、九〇年代からずっと、中小零細業者の経営は厳しい状態が続いています。 全国商工団体連合会(会員二〇万人)は、従業員一人~九人以下の業者で作る各地の民主商工会の連合体。同会の共済会を担当している常任理事の今井誠さん は、「苦しい経営で、医療にかかる時間も経済的余裕もない人が大半」と言います(図1)。初診から数日で亡くなった、救急搬送されるまで医者にかかったことがなかった、治療が必要なことはわかっていても、高額な抗がん剤治療の費用が捻出できず、若くして亡くなった…などの報告が後を絶ちません。

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「不調でも休めない」

 同会婦人部が行う全国業者婦人実態調査(業者の妻や起業した女性の会員が対象、九八七九人分を集計)では、体の具合が「悪い」一〇・二%、「時々悪い」五一・五%で、計六割超の人が、体調に不安を抱えて仕事をしています。
 中小業者の大半が入る国民健康保険には、サラリーマンが入る健保にある「傷病手当」がありません。仕事を休めば収入減になるため、体調不良でも病院に行けず無理して働かざるを得ません。
 若い頃から福岡・博多で飲食店を営む貝嶋槇子さん(72)は、八年前にぼうこうがんになり、八回の手術。今も月一回の検査が欠かせません。入退院を繰り 返していたときも、退院翌日から店に出ました。午前一一時から午後一一時まで営業しています。
 年金は月五万円余。店舗を建て替えたときのローンも残っています。「現金が入ってこないと困る。まだ店を閉めるわけにはいかない。年金や社会保障がもう少し充実していれば…」と貝嶋さん。

国保料(税)につぶされる

 同会が半年ごとに実施している営業動向調査では、「暮らしで困っていること」の質問に「生活費」「国保・健保の保険料支払い」が上位に入ります。三九歳以下で「国保・健保の保険料支払いに困っている」と答えた人は四割。
 「所得二三〇万円の世帯でも請求される国保料が三〇万円などというのはざら。保険証を取り上げられるのが怖くて、生活費を切り詰め、無理をして保険料を 支払っている人も」と今井さん。国が滞納世帯へのペナルティーを強化した結果、短期保険証の交付率は〇五年上期の一七・一%から一一年上期には三九・一% まで急増。今も三割台で推移しています。
 国保料(税)には減免制度がありますが、実際には「災害時」や「所得が前年の半分以下」などと決められた条件に合わず、対象から外される業者がほとんどです。
 山口県の女性(二〇代)は、配管業の夫と二人の子どもの四人暮らし。年所得三〇〇万円程度で、国保料は約四〇万円。国保料を滞納し短期保険証に。親戚に 借金して完納しましたが、安定して払えるあてはありません。減免申請は「売り上げが前年の三分の一以上減らないと認められない」と却下。分納でしのいでい ます。
 滞納が続くと差し押さえも。障害児のいる家庭の児童扶養手当まで差し押さえられるケースも。

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追い打ちかける消費税

 先の業者婦人調査の二〇一二年版では、営業所得二〇〇万円以下は四八・九%、二〇〇~三〇〇万円が一九・一%で、七割弱がワーキング・プア(図2)。所得一〇〇万円未満では、収益が赤字の人が六一%と深刻です。
 追い打ちをかけるのが消費税です。小さな店では価格に消費税を乗せられなかったり、立場の弱い下請けの場合は取引先から消費税分を買いたたかれたりしま す。消費税を価格に「まったく転嫁できていない」は二八・三%で、〇九年調査の二五・九%から増加。業者は赤字でも消費税を納税しなければならず、滞納す れば年一四・六%もの延滞税がかかります。
 今井さんは「消費税増税になれば、中小業者は立ちゆかない。増税をやめ、社会保障充実こそ必要だ。業者の健診などでお世話になっている民医連と手を携えたい」と話しています。

(民医連新聞 第1546号 2013年4月15日)

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