民医連新聞

2013年3月18日

生保でカンジャのあたしの物語 (4)病院へ行くまで 文:和久井みちる

 生活保護利用者の暮らしには、見えないところでさまざまな制約や「手続き」が織り込まれています。今回は、病院に通う時のことを知ってもらいたいと思います。
 昨今、生活保護利用者は「タダだから、必要のない受診をしている」という報道が盛んです。真っ赤なウソだと思います。
 生活保護利用者には保険証がありません。保険証の代わりに、医療券、調剤券という書類を窓口に提出します。福祉事務所のケースワーカーに「どこがどう具 合が悪いから、どこの病院に受診したい」とあらかじめ申し出て、病院名が記載された医療券をもらうのです。調剤券も同じです。原則として、受診できるのは 「生活保護指定医療機関」で、1つの診療科目については同じ月に1か所しか受診できません。これだけでも、報道されるような「お手軽受診」は不可能だとお 分かりいただけると思います。
 医師から定期受診を指示されたり、3か月後に再検査を促されても、福祉事務所で「またか」とか「我慢できないのか」「どう悪いのか」などとしつこく追及 されるため、それが辛くて医療券の発行依頼ができず、病状を悪化させたまま受診できない友人を多く知っています。とりわけ、虫歯を放置している利用者は多 いようです。
 病院へ通う交通費(通院移送費)も、受け取るにはかなりの労力が必要です。利用者が住んでいるのは、交通の便が良い場所とは限りません。交通ルートを申 告すると、たとえ30分遠回りしてでも、安い方法で行くよう指示されることもあり、具合の悪い人には本当に負担です。2008年に「通院移送費の不正受 給」が報道され、移送費削減、不支給が問題になりました。その時も、慢性疾患や高齢の方々が精神的にも追い詰められ、「受診難」になって病気を悪化させま した。私たちは必死で困った事例を集めて、移送費の不支給を撤回してくれるよう、行政に働きかけたりもしました。
 こんな風に幾多の手続きやストレスを乗り越えて、ようやく診察室の椅子に座り、医師に向かってつらさや痛みを打ち明けることができるのです。

(民医連新聞 第1544号 2013年3月18日)

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