民医連新聞

2013年2月18日

生保でカンジャのあたしの物語 (2)「基準引き下げ」ってどういうイミ? 文:和久井みちる

 最近、バッシングとは少し違った側面から生活保護が報道され始めました。1月末、政府が生活保護の基準引き下げの方針を固めたからです。今回はこの生活保護制度の「改悪」の動きについてお伝えしたいと思います。
 生活保護は医療、介護、教育、葬祭、出産、生業、住宅、生活の8つの「扶助(援助)」項目が組み合わされて、世帯ごとに必要な給付が決められています。 中でも、どの世帯でも絶対に欠くことのできないのは「生活扶助」で、食費や光熱費、衣料費などの生活にかかわる部分です。今回、引き下げの対象となったの は、その「生活扶助費」なのです。
 みなさんの生活費が、4月から10%削減されたら生活にどんな影響が出ますか? 月収100万円の人なら10%削減されても、残ったお金で暮らしていく ことは可能でしょう。しかし、今回は「最低生活基準」で暮らしている生活保護利用者、それもお子さんのいる家庭が一番大きな引き下げ幅になっています。さ らに驚いたことに、子どもが多い世帯の方がより多く削減されるというのです。にわかには信じられない話です。
 「もっと大変な人がいるから」というのが政府が引き下げを決めた理由なのだそうです。生活保護を利用していない子育て世帯の一番収入の低い10%の人た ちと比べてみたら、生活保護を利用していない家庭の方が苦しい生活をしていることが分かった。「だからもっと低い人に基準を合わせよう」ということです。
 生活保護は国の定める「最低生活基準(ナショナルミニマム)」です。「基準」なのに、それをどんどん低い方に合わせるというのですから無茶苦茶です。1 ミリがいつの間にか0.5ミリになり、1円が5銭になってしまったら、国の生活全体が地盤沈下を起こします。
 さらに生活保護基準は、「準保護状態」という、ギリギリ保護を利用しないで頑張っている方々の保険料減免や就学援助の基準でもあります。生活保護費が下 げられたら、減免を受けられる人の基準も一緒に下がってしまい、たとえば国民健康保険料の減免対象から外れた人は無保険になる可能性が高まります。
 生活保護制度は、利用していない人には直接関係ない制度のようで、実は多くの人の暮らしに大変大きな影響を及ぼすものだということを、まず知ってほしい と思います。

(民医連新聞 第1542号 2013年2月18日)

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