民医連新聞

2013年2月4日

生保でカンジャのあたしの物語 (1)生活保護制度がなかったら… 文:和久井みちる

 昨年12月に『生活保護とあたし』という単行本を出版しました。2007年から2011年はじめまで3年半の間、生活保護制度を利用していた時の経験をもとに、日々の暮らしや感じていたことを書いたものです。
 生活保護を利用するきっかけは、うつ病を発症してフルタイム勤務ができなくなり、貯金が底をついてしまったからです。なぜうつ病になったのかというと、 長いことDV(ドメスティック・バイオレンス)環境の中で暮らすうちに、心が「閉じて」しまったから。DV被害女性の多くは、私と同じようにうつ病やうつ 症状に長く苦しんでいます。うつ病発症から10年、今では大きな波もなくフルタイムの仕事に復帰できるまでに回復してきました。
 私は特段に変わった経歴で生きてきたわけではありません。親兄弟もいる家庭で育ち、贅沢はできなくても食べるのに困ることはなく、高校では友達とのお喋 りにいそしみ、部活動に励み、大学に進学し、就職…。どこにでもある「その他大勢」というべき経歴です。
 ではDV被害者は特別な存在でしょうか? 内閣府の調査では、DV被害にあった経験のある女性は「3人に1人」とさえ言われています。ですから、DVに 関しても私だけが特段に変わった運命を背負っている…などとは思っていないのです。
 私が少数派(?)になったのは、おそらく生活保護を利用したときからでしょうか。実は、私がDV被害環境から脱却し、うつ病を改善してこられたのは、 「生活保護制度があったから」、そして「生活保護制度は私も守ってくれる、と知っていたから」です。私はかつて行政の職員として働いていました。そのと き、仕事を通じて生活保護の制度についてや、生活保護を利用して慎ましく真摯に生きている素敵な方たちの姿をたくさん知っていました。ですから、生活保護 への偏見はもとより否定的な感情は少しもなかったのです。生活保護制度がなければ、私の人生は今頃どんな結末になっていたでしょう。
 次回から、生活保護制度が存在する意味をいっしょに考えていけたらと思います。

(民医連新聞 第1541号 2013年2月4日)

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