民医連新聞

2002年10月11日

第6回看活研分科会より/ 看護の視点ひろがり患者さんの満足が看護の喜び/ 各地の多彩な活動を交流

 第6回全日本民医連看護活動研究交流集会では、7つのテーマで分科会が開かれました。その一部を紹介します。

  学習や意見交換の場が職場づくりの決め手に
 「ともに育ち合う職場づくり、民主的集団医療のとりくみ」第9会場(1日目午後)
  約40人が参加し、9演題が報告されました。
 ガン患者の看護に携わるスタッフのために、精神科医の協力でリエゾンカンファレンス(※)を1年間行った経験を京都民医連中央病院が発表し、関心をあつ めました。看護師が自身の困難感を話し、精神科医や経験のある看護師から助言を得られ、患者を理解し向き合う上でも、看護師自身が仕事を継続するにも役 立っていると報告しました。
 福岡・中原病院は、1病棟の26人の看護師に「民医連について」アンケートを実施したうえ、3回の独自学習会を行い、理解を深めることができた経験を報 告。岡山協立病院は、22人の看護チームで月1回30分の事例検討を、2年間継続してとりくんだ経験を。また石川民医連は「ホットケア委員会」をたちあ げ、介護職の教育カリキュラムを作成し教育にとりくんだ経験を。福岡・大手町病院は、看護主任会議の改善にとりくんだ経験を。
 京都民医連は、各事業所が近畿高等看護専門学校の実習指定施設になったことを機に「実習指導者養成講座」を行った経験を報告しました。卒後四年目以上の 20人の看護師が受講し、「学生指導だけでなく、職場内にも応用できる内容だった」「自分の看護観をふり返る場だった」と評価され、卒後教育にも役立った と発言しました。
 学習や意見交換の場を工夫し確保して職場づくりをすすめ、看護の視点がひろがり、患者さんの満足が看護の喜びとして実感されている様子が各地の報告にあふれていました。
* * *

クリティカルパスについても三題の発表が。福岡・みさき病院は、療養病棟でクリティカルパスを独自に考案した経験 を。北海道・勤医協中央病院は年間50件ある人工膝関節手術にクリティカルパスを導入。島根・松江生協病院の外科病棟は、1年間で療養計画を120人分作 成し、30人の患者と記録を共有した経験を報告。いずれも看護科が他職種に働きかけ学習するなど、療養計画(パス)をつくる上で積極的な役割を果たし、療 養計画を患者とともにすすめました。チーム医療を向上させ、患者さんが主体的に治療に参加する上でパスが重要であること、パスの欠点とされる患者の個別性 への対応は、率直な討議で克服すべきことを各演者が指摘。参加者から熱心な質問がだされました。
◆ ◆ ◆

※リエゾンカンファレンス 身体疾患に伴って起こる精神的な問題について、精神科医が担当科と共同して積極的に対応するという考え方。リエゾンはフランス語源で、「連絡・連携」を意味する

 在宅ターミナルで経験豊かな報告
「安心して住みつづけられるまちづくり地域に広がる看護と介護」第13会場(2日目午後)
 60人が参加、八演題が発表されました。
 神奈川・衣笠訪問看護STは、亡くなった患者さんの家族へのケアにとりくんだ経験を。神奈川・京町診療所は、ガン患者の在宅ホスピスのとりくみを。山 梨・甲府看護STは本人の強い希望で、ひとり暮らしのターミナルの人をささえた経験を。奈良・土庫病院はモルヒネ持続点滴、腹水穿刺、毎日の点滴などで見 守った事例を。神奈川・おおしま看護STでは、在宅でターミナルをみとった四家族にたいするききとり調査を。北海道・くろまつない訪問看護STではガン末 期と診断された患者が、生まれ育った風景の中で、家族に囲まれて長期に在宅生活を継続している例を報告しました。
 患者さんの希望と家族の理解のもとに、在宅で死を迎えることがいまや選択肢の一つ。在宅の患者さんをささえるケアチームのなかでコーディネーターとして看護師の役割が大きいことを各演者が強調しました。
 食事排泄などの日常生活の世話のたいへんさに加え、常に緊張を強いられる家族にたいして、介護の限界を見極めながらバックアップするために必要なことと して、各報告者が共通にあげていたのは、[1]24時間すぐ対応できる体制、[2]往診と訪問看護の密な連携、[3]苦痛対策、機器等への習熟、[4]家 族への精神的フォローなどでした。また一人の患者に対して訪問看護師が複数で関わり、スタッフの思いを口に出して表現する場を設け、情報を共有することの 大切さ、利用料の問題で訪問を継続できない患者さんがいる問題も出されました。
 会場から「在宅での輸液の対応は」など具体的な質問が出され、参加者の経験も含めて交流が行われました。

「転倒・転落防止」職員の意識づけが鍵
「患者の立場に立つ看護技術、業務改善、医療の安全性人権を守る医療の安全性」 第2会場(1日目午後)
 約60人が参加、23演題の発表がありました。
 山口・宇部協立病院からは「当院における転倒転落事故の分析と対応」について報告。
 同院では、2001年1月から同年12月までのアクシデントレポートを分析。ベットサイドでの転倒報告が多いことに注目しました。
 そして高齢、転倒歴、尿便意があり排泄介助が必要、補助器具使用歩行、脳血管障害と痴呆、眠剤などの薬物服用を、リスクとして整理しました。
 このリスクに対応するため転倒防止マニュアルを改訂し「転倒ハイリスクアセスメント」用紙を作成。リスクをもつ患者さんが入院した時にこの用紙を活用することを「標準化」したと報告。
 北海道・勤医協中央病院からは「家族と共同の視点をもった転倒事故予防のとりくみ」について報告。病棟での転倒の場所をチェックし、予防する方法を考え ました。安全や抑制について学習会を行い、知識、技術をえるなかで職員の認識は変化しました。また家族の協力を得るとりくみでうまくいった事例を紹介しま した。
 その他、アット・ハットメモを書きやすくしたことで報告が増え、状況の把握や分析ができ、転倒対策がすすんだとの報告(福岡)、2001年からとりくんでいる身体拘束廃止委員会の活動についての報告(岡山)などがありました。
 全体的な特徴は、アセスメントシートの活用や学習活動を通じて、職員が身体拘束、転倒・転落防止の意識づけを図ってきたとの報告が多かったことです。

●参加者の感想

 初参加です
◎忙しい業務の中で転倒転落の統計をとることはすごいと感じました。報告者の発表が非常に参考になり、ぜひ、自分たちのところでも実践したい。

(香川・木村亜紀、介護福祉士)

 在宅の経験蓄積されてきた
◎在宅医療の経験の内容が濃くなってきたと感じました。私の診療所でも今日聞いた報告におとらないくらいのとりくみをしているのですが、まとめて普遍化、教訓化することが大事なのだと、考させられました。ぜひ次回は…。
 現実には経済的な困難で訪問看護が続けられなくなりそうな患者さんをどう助けるか、頭が痛い問題です。

(東京・中村和子、看護師)

 他院所の工夫とりいれたい
◎転倒・転落の対策が色いろと他院所でも工夫されていてとても勉強になりました。実際職場へ伝えて、実践していきたいです。

(青森・相馬美春、介護福祉士)

 他院のとりくみきけうれしい
◎他の病院のとりくみをきけたことを本当にうれしく思い、当院との比較もできて勉強になりました。

(三重・安井葉月、看護師)

(民医連新聞2002年10月11日/1289号)

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