民医連新聞

2013年1月21日

双葉町民の甲状腺検診始まる 福島・生協いいの診

 全日本民医連は福島県双葉町(ふたばまち)町民の甲状腺エコー検診を受託しました。一二月二二~二三日に初めての検診が、福島医療生協・生協いいの診療所(福島市)で行われました。核害に立ち向かう民医連の活動の一環です。(木下直子記者)

 双葉町は、東電福島第一原発から一〇km圏内にあります。原発事故で、全世帯に避難勧告が出されました。埼玉県の廃校にある避難所の一四六人をはじめ、今も全町民が各地で避難生活中です。
 チェルノブイリの原発事故では、放射性ヨウ素による内部被曝で小児甲状腺がんが発生しました。福島県では県民健康管理調査の一環として、事故当時〇~一 八歳だった県民に甲状腺エコー検査を二年に一度行うことにしています(二〇歳以降から五年ごと)。
 しかし、それだけでは放射能にさらされた町民の健康不安はぬぐえません。そこで双葉町は「事故当時四〇歳未満」の町民に対象を広げた独自の検診を行い、不安に応えることに決めました。

30人が受診

 今回の検診は、福島市と二本松市に身を寄せる一三〇人を対象に町から通知されました。直前だったにもかかわらず、二日間で一〇~三〇代の三〇人が受診しました。
受診者は問診票に記入し、甲状腺エコー検査を行った後、画像を見ながら松本純診療所長から判定結果やその意味について、ていねいな説明を受けました。
 三人の子どもを連れたお母さんは「県の検診も受けましたが、紙一枚の結果が来ただけで…」と、緊張した面持ちで来ていましたが、帰り際には「お医者さんと話せて安心した」とホッとした笑顔を見せました。
 一日の検診が終わると、判定会議です。医師と技師らが頭を寄せあい、エコー画像を確認しながら、所見の有無や判定レベルを一件一件確定していきます。
 三〇人の判定は、一八歳以下の一四人のうちA1が五人、A2が九人でした。また、一九歳以上ではA1が三人、A2一〇人、Bが二人、Cが一人。B、C判定の三人には、専門機関での二次精査につなぎました。

県外の医師や技師らが

 今回の検診でスタッフを務めた二一人の中には、北海道や宮城など県外の医師や技師が参加していました。技術支援とともに、これから地元で行う甲状腺検診の実地研修も兼ねて。双葉町の検診先に手挙げしている民医連事業所は一月一五日現在、八八にのぼります。
 「甲状腺エコーは手がけていないので勉強に」と勤務後に駆けつけた技師も。宮城・坂総合病院の医師・阿南陽二さんは「当院では受け入れを議論中です。責 任を持ってやれるかと不安でしたが、来てみて『やれそうだ』と」。

shinbun_1540_01

福島から全国の仲間に

 「とりくんで良かった!」が、松本所長の第一声。「診療所には検診の機器も技術もないのは 承知」で、看護長や事務長に検診を持ちかけました。「やりましょう」と力強い反応が戻り、支援をもらいながらの実施に。「第一原発から五一kmにある“原 発からいちばん近い民医連事業所”として、何かしたかった。受診者と話すうちに、三・一一直後の避難者たちと再会したような気になりました。あの日は終 わっていない。県内に避難中の人たちでさえ、取り残された顔をしていました。ましてや県外避難者たちの孤立感はどれ程か―各地の民医連の仲間には『くれぐ れも避難者たちをお願いします』と伝えたい」。
 検診は今後、福島県内や埼玉をはじめ全国で実施予定です。

 原発事故避難者の診療や健康診断、甲状腺エコーに関する文書(二〇一二年九月理事会)を民医連のホームページに掲載中です。

(民医連新聞 第1540号 2013年1月21日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ