民医連新聞

2012年11月5日

多くの人たちと地域の再生を 医・食・住・環境シンポ長野

 一 〇月七日、全日本民医連「いのち」を守る共同行動推進本部は、長野市内で「地域から“医・食・住・環境”の再生をめざすシンポジウム」を開催。地域循環型 の社会をめざし新しい共同をつくるべく、各地で懇談会やシンポジウムにとりくもう、と呼びかけた全日本民医連の最初の企画になります。民医連外の三二人を 含む五〇二人が参加しました。誰もが安心して住み続けるには何が必要か? 六人のシンポジストが各分野で新しい地域のあり方について語りました。(矢作史 考記者)

対話通じ「架け橋」実感

 シンポジウムにはJA長野中央会をはじめ、四〇団体が賛同。また長野県からの後援もありました。主催者と長野県民医連は「こちらから壁を作らない」を合 言葉に、団体や自治体など様々な方面にシンポジウムへの賛同を呼びかけました。送った案内状は五〇〇通以上。また六〇を超える団体を直接訪問しました。初 めて懇談する団体も少なくありませんでしたが「私たちが本来やるべき内容ですね」などと話もはずみ、共感が広がりました。
 長野県民医連の岩須靖弘事務局長は「付き合いがなかった人たちからも快く迎えてもらえました。賛同までできないが…という返事でも『次はここを訪問して は』とつながりを紹介してくれたことも。様々な人たちと地域再生の話題で共同できると分かった」と確信を語ります。とりくみを通して四〇期総会方針が掲げ た「架け橋」の役割を実感しています。

〈シンポジウム〉

「人間的な豊かさ」目指すには―

 冒頭、主催者を代表して全日本民医連の藤末衛会長があいさつ。「地域から誰もが安心して住み続けられるまちづくりの一つとして医療・介護の再生を目指しましょう」と呼びかけました。
 「小さくても輝く自治体」を目指した栄村の前村長・高橋彦芳さんは住民の知恵や技を重視して村の自治を続けてきた経験を報告。公共事業に頼らず、村単独 事業で棚田の圃場整備や村道を作ったこと。そして、豪雪地帯ならではの「居住福祉」の充実にも努めました。除雪ができない村民のために雪害対策救助員を配 置し、雪害も減少。また地域に介護事業所がないため、住民のヘルパーを養成し、「げたばきヘルパー」として活動していることを報告しました。
 長野大学の久保木匡介准教授はリーマンショック以降、愛知県に次いで派遣切りが多かった長野県の雇用問題を報告。困窮者のセーフティーネットや社会復帰 のための制度の弱さを指摘し、「地域単位で貧困を作らないとりくみが必要」と訴えました。
 鹿教湯(かけゆ)病院(上田市)の市川英彦名誉院長は「私の医師人生とTPP」と題して発言。経済発展から疎外された独居高齢者の存在を地域医療から見 ている話。そしてTPPに反対する理由を「患者さんを取り巻く環境に医師として無関心でいいはずがない。経済は本来、生活を豊かにするものだが、TPPは 生活破壊だ」と強調しました。
 農業を守るとりくみを発言したのは、農事組合法人「北の原」の小原恒敏代表理事。農家を組合員にして法人化することで農業経営を立て直しています。土作 りや減農薬など環境に優しい農業にとりくむ認定資格者「エコファーマー」を法人で取得して、収入を安定させました。また、農地を守る課題を地域で共有する ため「北の原自然環境を守る会」を設立。非農家世帯とキッズ農園をつくるなど、地域に根ざし活動中です。
 「初期投資ゼロで家に太陽光パネルを設置します」と発言したのは、おひさま進歩エネルギー株式会社の蓬田(よもぎだ)裕一さん。同社では太陽光パネルを 保育園や公民館など公的施設三七カ所に設置。太陽光発電は子どもたちの環境教育にもなっています。同社の目標は「年間の原油購入額二三兆円という日本のお 金の流れを変え、社会を変えること。エネルギーを自分たちの手に取り戻すことです」と語りました。
 長野県民医連の熊谷嘉隆会長は日本と地元飯田地域の医療・介護の状況について報告。「医療介護の需要が拡大しているにもかかわらず、国は抑制政策をとっ ている。ここを変えなければ」と。産業構造そのものを変えなければ生きのびてはいけないことや、地場産業の大切さを語りました。そして「地域でがんばって きても、原発事故が起こればすべてダメになる。原発には終止符を」と強調しました。

* * *

 閉会あいさつで全日本民医連の石川徹副会長は「今日本がすべきことは、あらゆる分野で競争 と効率化を求め、格差を拡大してゆくことではありません。一%の人だけが裕福になるのではなく、九九%の国民が豊かになる社会を目指さなければ。経済以上 に人間関係の豊かさが大切。昔から人は助けあいながら生きています。知恵を出し合い、安心して住み続けられるまちづくりを実現するのは私たち自身です」 と、結びました。

(民医連新聞 第1535号 2012年11月5日)

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