民医連新聞

2012年10月15日

「共同」の力でヘルスプロモーションを 国際HPHネットワークハンヌ・ターネセンさんに聞く

 九月一五~一六日に開かれたHPH(Health Promoting Hospitals & Health  services)セミナーでは、国際HPHネットワーク事務局長のハンヌ・ターネセン教授が講演しました。ターネセンさんは、福島第一原発事故の避難者 たちを訪ねたり、埼玉民医連と交流するなど、民医連の活動にも触れました。HPHの重要性や民医連の印象について聞きました。(丸山聡子記者)

 皆さんに迎えていただいた瞬間から、実りある話し合いを重ねました。来日前に民医連の方針は読んでいましたが、話を聞けば聞くほど、それを現場で実践していることに興味を惹かれました。
 はじめに、双葉町の町民がいまも避難生活を送っている埼玉県加須市の旧埼玉県立騎西高校を訪ねました。埼玉民医連が支援していると聞きました。印象深い 訪問でした。井戸川克隆町長はじめ保健師さんから話を聞き、真剣に仕事にとりくむ姿が心に残りました。
 住民の皆さんが生活空間に招き入れてくれ、感銘を受けました。家族ごとに段ボールで仕切られただけの空間でした。非常に困難な状況で生活していることは 衝撃でした。にもかかわらず、被災者の組織をつくり、暮らしている…とても強い人々だとも感じました。
 東日本大震災と福島第一原発事故には世界中が注目しましたが、その後の住民の現状は知られていません。私がセンター長を務めるWHOCCの科学誌『クリ ニカル ヘルス プロモーション』に双葉町の現状を載せ、世界に発信することを、町長と約束しました。
 その後、埼玉協同病院で職員や共同組織の人たちと交流しました。特に組合員さんたちは女性が中心にがんばっており、驚きました。「ヘルシーホームメイ ド」と言うのでしょうか、野菜をたっぷり使った家庭料理もいただきました。とてもすばらしく、これが広がるといいと思いました。
 病院のヘルスプロモーション活動についても聞きました。職員手作りのポスターがあり、日常活動を豊かに展開されていることに驚きました。この病院では、 患者を中心にした活動が、どの場面でも行われていると感じました。

日常活動でこそ価値が

 全日本民医連の藤末会長との懇談や皆さんとの交流を通じて感じたのは、民医連の活動が綱領や方針に言葉として書かれているだけではなく、全国で実践されていることです。スタッフの熱心さにも驚きました。それが現場から管理職まで浸透している。とても大事なことです。
 「すでに日本ではヘルスプロモーション活動が活発に行われており、しかもそれが当然のこと、自然なこととして捉えられている」と感じました。ヘルスプロ モーションは日常活動に自然に組み込まれてこそ、価値が発揮されます。
 今後の課題として、職員の健康問題、労働環境の整備を挙げたいと思います。「患者さんのため」に熱心にとりくんでいますが、自分たちの労働環境や健康についても考えるべきだと思います。

社会全体でとりくむ

 ヘルスプロモーション活動は、「求める人」だけに向けた活動ではありません。ホームレスや社会的弱者など、自ら求めない、求められない人たちへの継続したとりくみが大事です。
 確かに、個人は自らの健康の一番の責任者であり、自分をコントロールできるようになることは大事です。一方で、それができる条件づくりが必要であり、これは社会全体でとりくむことです。
 この活動は一人ではできません。公衆衛生にとりくむ人も臨床の現場にいる人も共同してとりくまなければ。一人が、一つの病院が、ではなく、「つながる」ことが大事なのです。
 HPHは、プライマリ・ケアと、病院での治療的ケアの「架け橋」です。民医連だけではなく、日本全体のプロジェクトにしていかなければなりません。
 エビデンスを収集すること、活動のすべてを可視化すること。これは特別なことではありません。国際HPHネットワークには、世界で九〇〇(約一〇〇万 人)のネットワークが加盟しています。「共同」が大事です。皆さんの活動や、そこから得られた情報を秘密にしないで、私たちと共有していきましょう。
 行動重視でとりくみましょう。一歩でも踏み出せば必ず健康成果が出ます。このことに確信を持ち、実りある共同を広げましょう。

(民医連新聞 第1534号 2012年10月15日)

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