民医連新聞

2012年10月1日

たばこと禁煙基礎知識 医療・介護で働く人へ これくらいは知っておこう!(7) 連載を終えるにあたり 広瀬俊雄医師(仙台錦町診療所・産業医学センター所長) By宮城民医連 禁煙ネット

 読者のみなさん、宮城民医連禁煙ネットによる6回の連載はいかがでしたでしょうか?
 「禁煙」賛成者からの支持ばかりではなく、喫煙者の中から新たな禁煙者がたくさん生まれたことを願っております。
 しかしこの連載中に、働く人々の健康問題で大変なことがまた起きていました。「印刷工胆管がん」や「医療用ゴム手袋処理に関わった看護師の中皮腫」(労 災)です。たばこに限らず、どんなものであっても健康を侵す有害な物については、それをなくすようにとりくまなければなりません。
 新しい民医連綱領では「安心して住み続けられるまちづくり」を掲げました。しかし「健康で働ける職場づくり」の必要性がこのところまた、明らかにされた といえます(個人的な持論ですが、早急に綱領に書き加える修正をお願いしたいと思います)。
 綱領にもあるように「安心して住み続けられるまちづくり」に深く関わっていることですが、この連載第2回で取り上げたFCTCをもとに世界各国で「まち ぐるみでとりくむ禁煙推進の活動」が強調され、その成果が次々と明らかにされてきています。
 心筋梗塞を例に紹介すると、米モンタナ州ヘレナでは、公共の場と職場の禁煙条例によって4割減少、米コロラド州プエブロでも27%、イタリアのピエモン テ州では11%、アイルランドは11%、スコットランドでは17%減少しています。さらに全米アカデミー医学研究所報告書によれば、禁煙条例に関する研究 では心臓発作が6~47%減少したとされています。いま、このような成果に素直に学び、地域を想定した公衆衛生・予防医学の活動の強化が望まれています。
 民医連の活動でも先頭に立って指導的な活動を展開していながらも、喫煙している方も結構多いような気がします。自らがまず禁煙し、民医連新綱領の視点に 沿い、地域の健康度を上げる為の活動を推進することが必要だと思います。
 米国ではいくつもの州で医療機関の開業の条件に「禁煙指導」が掲げられているそうです。それが医療従事者の役目とされているからです。この連載を読んで 頂ければ、いかに喫煙が喫煙者自身とその周囲で「吸わされている人」の健康を破壊しているかがお分かりになったかと思います。そんな中で、「禁煙運動は個 人の権利を制限するファシズム思想だ」と強弁する文化人がみられるのは大変残念です。自らの主張こそ権力に歓迎されていること気づいてほしいものです。
 たばこを「個人的な嗜好」と言うのはもう終わりにして、国民の健康を守り・推進する組織として民医連を挙げて禁煙にとりくむことを強く願いつつ連載を終わりたいと思います。
参考文献『世界を騙しつづける科学者たち』(上下巻)ナオミ・オレスケス 楽工社

(民医連新聞 第1533号 2012年10月1日)

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