民医連新聞

2012年9月3日

核兵器も原発もない社会を ノーモア・ヒバクシャ 記憶遺産を継承する会 設立記念集会

 広島・長崎の原爆被害の実相を伝え核兵器廃絶を実現しようと、NPO法人「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」の設立記 念集会が七月一五日、都内で行われました。民医連の齋藤紀医師(福島・医療生協わたり病院)と精神科医の香山リカさん、被爆者の木戸季市さんが参加したパ ネルディスカッションなどがありました。福島原発事故を踏まえ、「核兵器も原発もない、人間らしく生きることのできる社会の実現を」との集会宣言を採択し ました。(新井健治記者)

 継承する会の目的は(1)被爆体験や被爆者運動の情報を収集・整理・普及する、(2)被爆体験と被爆者の願いを継承する、(3)「平和資料センター」設立などキーステーションの役割を果たす、(4)国に対し原爆被害の究明と普及の責任を果たすよう求める、の四点です。
 記念集会では、同会代表理事の岩佐幹三さん(日本原水爆被害者団体協議会代表委員)が「『再びヒバクシャをつくるな』とは、皆さんが自分の問題として直 面しなければならない歴史的な課題。活動の担い手として、多くの人に参加してほしい」とあいさつしました。

体験と課題の継承を

 福島で原発事故被災者の相談にのってきた齋藤さんは、パネルディスカッションで「今の日本 社会を一言で表すと再稼働と復興の停滞。核開発の推進と核廃絶を求める声が拮抗(きっこう)してきた戦後の世界と、今の日本の現状は重なる部分が多い。住 民の放射能への不安は強いが、不安の全体構造を理解することが大切です」と話しました。
 齋藤さんは、医療を通して被爆者の人生にかかわってきました。「八月六、九日は被爆体験の原点ですが、その後の生きざまを含めて継承の対象になる。記憶遺産の対象は一人ひとりが違います」と指摘しました。
 香山さんは命より経済発展を優先するグローバル資本主義にあらがうためには、被爆者が体験を語り、若い世代が聞き取る「ネット社会では、一見して非効率な方法」が唯一の手段、と強調しました。
 五歳の時に長崎で被爆した木戸さん(日本被団協事務局次長)は「小学生に被爆体験を語る時、『今、ここに原爆が落ちたら』と想像すると身震いがする。私 たちは、残された時間が少ない。若い世代とともに考え、体験だけでなく課題も継承する。それがこの会を作った目的です」と話しました。

伝えられる人になる

 会場の高校生は「原発を止めたら電気が足りなくなる、と言う友人もいる。反論できない自分がもどかしい。勉強をして核の恐ろしさを伝えられる人になりたい」と発言しました。
 香山さんは「原発への恐怖が核兵器廃絶へ結びつくことに期待したい。核兵器廃絶の世論は、戦後長くかかって作られてきたが、今はソーシャルメディアの発 達で、ある日を境に爆発的に増える可能性がある」と指摘しました。

(民医連新聞 第1531号 2012年9月3日)

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