民医連新聞

2012年5月7日

相談室日誌 連載347 患者家族の不安の背景にあったこと 清藤佑香(岩手)

 Aさんは、胆管炎、総胆管結石で入院した七〇代の男性。入院中に嚥下機能が低下し、誤嚥性の肺炎を繰り返したため、入院が長期になっていました。
 Aさんの妻は、退院後は自宅での介護を希望していました。しかし、長期入院のためADLが低下したAさんを、高齢の妻がみることは困難でした。退院後、施設入所する方向で支援していくことになりました。
 妻にそのことを話し、入所施設を紹介しました。しかし、希望する条件に合う所はなく、申し込みはされませんでした。また、妻は施設入所そのものに不安を感じているようでした。
 SWは、その不安の原因が「施設の情報が少ないためではないか」と考えました。そこで施設の情報を調べ、会うたびに情報提供したり、施設見学を勧めるなど、働きかけました。
 その結果、施設入所は申し込んだものの、待機期間が長引く可能性があるとのことでした。妻はそれも不安な様子で入院が長期化することを「申し訳ない、気まずい」と語りました。
 妻のこの思いに対して、他の複数の施設も申し込みを提案するなど、情報提供しましたが、不安は解消されない様子。そこで、この事例について先輩SWに相談することにしました。
 患者さんへの情報提供の仕方や、家族との関係作りについて聞くと「奥さんはあなたに拠り所になってほしかったのではないか?」というアドバイスでした。
  そう言われて、これまでの面接を振り返ると妻の不安の背景には、Aさんが施設入所した後の生活のことなど、さまざまな問題があったように思いました。
  そんな中で、退院先の決定を急いだため、Aさんの妻が安心して相談することができない関係になったと感じました。今年度から診療報酬も改定され、早期の退院がさらに促進される傾向にあります。
 SWとして患者や家族にとって何でも話せる「拠り所」となれるよう、その人の思いに寄り添うことを心掛けていきたいと思います。

(民医連新聞 第1523号 2012年5月7日)

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