民医連新聞

2012年3月19日

第9回全日本民医連表彰

 民医連職員の論文や発表などから優れた一〇題が表彰されました。今回の選考対象は、第一〇回学術・運動交流集会から一三題、第一〇回看護・介護活 動研究交流集会から一六題、その他六題でした。選考の結果、論文部門二題、発表部門八題の表彰を決定しました。その概要と選考委員会のコメントを紹介しま す(敬称略)。

論文部門

『水俣病不知火海沿岸住民健康調査とその意義』
熊本 高岡 滋(医師)
『慢性水俣病の臨床疫学的研究~チッソ・アセトアルデヒド工場操業停止後に出生した住民の神経症候』
熊本 藤野 糺(医師)
 「水俣病不知火海沿岸住民健康調査とその意義」(高岡滋)は、二〇〇九年に実施された水俣病大検診の結果をまとめた報告である。「指定・対象地域外」や 「一九六九年以降の出生・転入」者にも水俣病の広がりがあることを、自覚症状、神経所見、臍帯水銀値などから明らかにしている。
 藤野・高岡の「慢性水俣病の臨床疫学的研究」もチッソ・アセトアルデヒド工場操業停止後の一九六九年以降の出生者の水俣病の自覚症状、神経所見を詳細に 調査している。これら二編の論文は、特措法の救済対象年代を一九六九年一一月までとしていることに医学的根拠が無いこと、「指定・対象地域」外にも水俣病 が広がっていることを示す報告として医学的にきわめて重要な研究内容である。
 ※両論文は当該県連の医師集団が相互に関わっており、一対のものとして取り扱うことにした。

発表部門

『医療費・介護費相談調査のまとめ』
大阪 庄司美沙(SW) 全日本民医連SW委員会

 経済格差、貧困がすすむなか、患者の医療費介護費の負担が深刻さを増している。三〇〇〇件を超える全国規模の実態調査は民医連ならではのとりくみであ り、社会的にも大きなインパクトを与えるもの。「税と社会保障の一体改革」がいわれている今、本演題は時宜を得たものであり、社会保障改悪阻止の大きな力 になる。

『小児難病 人工呼吸器装着双児への訪問看護の関わり~一・五年のまとめと課題~』
東京 野村洋子(看護師)

 重い障害があっても(双児二人とも呼吸器装着)、自宅での両親との生活、季節の行事、保育園への通園などをかなえるため、一四か所もの機関と連携し、ま た自分たちの職場の改善や学習をしながら問題解決をしている点が素晴らしい。あきらめない看護実践であるとともに、今後につながる貴重なとりくみである。

『子どもの受療権を守る』
和歌山 佐藤洋一(医師)

 小児でも国保の短期証が増えていること、無保険の子どもが存在すること、自己負担がある時は無料の時に比べて受診回数が少ないことなどを調査で明らかに している。子どもの貧困について可視化が求められているなかで、今後のとりくみに対して示唆に富む発表である。

『薬害委員会の取り組みとシンポジウム開催』
京都 中 智美(薬剤師)

 イレッサ裁判にかかわる中で、若手薬剤師が、薬害について学び、シンポジウム開催まで成長する過程が報告されている。被害者家族である原告に寄り添う朗読劇の発表もあり、民医連職員としての成長もうかがえる。

『一人ひとりが正しい知識を身につけ、意志を持つこと、表示すること~意志に反して臓器を摘出されないために~』
埼玉 野田邦子(薬剤師)

 本演題は、移植医療に関して、一人ひとりが正しい知識を身につけ、意志を持つことをめざした活動の報告である。倫理委員会、アンケート、シンポジウムなど、職員や共同組織の人々が多数参加している様子が報告された。

『病棟再編を通していきいきとした病棟・職員集団へ』
埼玉 菅原久美子(看護師)

 医師不足による二次救急の返上、一般から回復期リハビリ病棟への転換などの厳しい再編計画を、地域全体の医療の質の向上(地域リハビリの確立)の視点 で、職員のモチベーションを下げず、チャレンジ(成長)の機会とし、組合員の不安にも応えつつ成し遂げた。中小病院に共通する課題の全国的な教訓となる報 告である。

『美笑キャンペーン~医科従事者の意識を変えることで歯科難民がへらせる~』
東京 保坂幸男(医師)

 通所リハビリ利用者の実態から、口腔ケア難民に気づき、歯科受診に結び付け、歯科医師会、医師会とも連携をとる活動にまでひろげている。かかりつけ医の役割として口腔ケアを当然のこととする活動で普及に値する。

『おくりびと~お悔やみ訪問・デスカンファレンスを通して~』
京都 小石原理恵(介護福祉士)

 看護職・介護職部会でのデスカンファレンス、お悔やみ訪問を通じ、スタッフ一人ひとりのターミナル観を育て深める事ができ、死にゆく人の個別ケアの意志統一をすすめている。今後の療養病棟のあり方を提起している。

(民医連新聞 第1520号 2012年3月19日)

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