民医連新聞

2012年3月5日

被災地発(10) 石巻市の仮設住宅をリハスタッフが訪問 宮城 坂総合病院

 民医連事業所のない宮城県石巻市の仮設住宅を、坂総合病院のリハビリスタッフが訪問、入居者の状態に必要な住宅改善や相談にとり くみました。石巻市からの依頼に応えた活動です。多大な津波被害を受けた同市には七〇〇〇戸の仮設住宅が設置されていますが、そこでの生活で生じるさまざ まな問題への対応がようやく着手された形。同院のリハビリ室室長・丹治宏江さんの報告です。

石巻市から要請が

 昨年一一月下旬、石巻市から坂総合病院に、「リハビリ職に仮設住宅の戸別訪問をしてもらえないか」という相談が入りました。
 これは昨年九月に宮城県が打ち出した「健康支援事業(リハビリテーション支援事業)」の一つです。応急仮設住宅等で生活する住民の生活不活発病(生活が 不活発なことが原因で全身の機能が低下する)や障害を予防するため、リハビリテーション専門職が住環境改善や福祉用具の調整等を行う、というもの。具体的 な活動は、(1)健康運動指導士等による集団運動指導、(2)リハ専門職による相談会、(3)リハ専門職による戸別訪問です。石巻市が私たちに要請したの は(3)の事業です。

386戸を訪問

 現地にいるリハ職員だけでは、七〇〇〇戸のフォローは困難。診療圏を超えたとりくみが必要 なため、要請に応じて急遽、一一月三〇日から石巻へ。当院は蛇田地区など七〇一戸を担当しました。訪問期間は一一月三〇~一二月二一日のうちの一〇日間。 戸別訪問はリハスタッフと事務の二人一組で行い、延べ二四人が参加しました。
 訪問調査は石巻市のマニュアルに基づき、風呂・トイレへの手すりの取り付け場所の確定や、福祉用具の選定が中心です。同市社協が事前に聞き取り調査を行 い、情報を整理してくれたため、私たちが訪問したのは三八六戸でした。うち、二割超にあたる八七戸で手すりや福祉用具が必要でした。
 対象世帯が多いため、点検は当初、風呂とトイレに限定されていましたが、途中で玄関周りも追加されました。玄関で転倒事故が発生したためです。

リハ超えた相談も

 過去にも何回か、仮設住宅を訪問したことがあります。しかし、風呂やトイレを見たのは初めてで、環境の悪さにとまどったスタッフも多かったようでした。
 手すりの取り付け場所や数、福祉用具の種類については、事前にある程度決められていたので、作業自体は慣れればスムーズにすすみました。ただ、マニュア ル通りでは解決しないケースも当然あり、個別対応を考えたり、介護保険制度を併用するなどの工夫も必要でした。
 また、訪問先の住民から「寒い」「狭い」「使いにくい」など、住環境への不満を多く聞きました。ほとんどの方が、今後の生活上の不安を口にされていたのも特徴です。

支援の継続が必要

 今回の訪問では、入居からさほど時間が経過していなかったため、もともとの痛みや体力低下、身体に障害がある方などへの対応が中心でした。しかし部屋が狭く、動線も短く、寒い環境で生活不活発病にならないか、今後が危惧される方も多く見受けられました。
 つい最近、県内の別の地域の仮設で、住宅改修の希望が入居当時の二件から七カ月経って四〇件に増えている、という報告がありました。石巻も含め、改めて継続的な支援が必要だと考えさせられました。

(民医連新聞 第1519号 2012年3月5日)

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