民医連新聞

2012年2月6日

相談室日誌 連載342 ようやく退院… 生活再建に向けて 大内剛(山形)

 Aさんは、自宅で動けなくなっている所を発見され、救急搬送・入院となりました。以前から当センターに訴えを寄せていた方です。「娘たちが殺された。犯人たちが床下に潜んで、毎晩血を抜いていく」などという妄想です。
 地域でも、用がないのにインターホンを鳴らして歩いたり、家賃滞納などのトラブルを起こし、そのたびに当センターや行政に苦情や連絡が入っていました。 「怖い、迷惑だから出て行ってほしい」という声まで上がっていました。
 Aさんの主な症状は妄想でした。行政といっしょに専門機関につなげようとしましたが、親族やキーパーソンが見つけられず、支援がすすみませんでした。
 また、Aさんは大家さんから、入院を機に「家には戻らないでほしい」と迫られてしまいました。入居してから一度も家賃を入れていなかったためです。この ままだと、退院が決まってもAさんの帰る先はありません。めどがつくまで入院を延ばすことになりました。
 その後、病院のSWから、Aさんの知人の情報がありました。この人に援助をお願いし、家賃の支払いや、介護の手続きを進め、これまで住んでいた家へと戻ることができました。
 しかし胸を撫で下ろしたのもつかの間、本当に大変なのは退院後でした。SWがAさん宅を訪問すると、ゴミだらけ。さらに驚いたのは、汲み取り式のトイレ から汚物が溢れていたのです。その惨状を目の当たりにし、茫然と立ちつくしました。気を取り直し、行政や職場で相談し、対応しました。
 トイレは一度では復元できず、二度の大がかりな掃除が必要でした。また、Aさん宅には着替えや掃除道具、洗濯機がなかったため、ヘルパーが入っても、掃除や洗濯ができない状況でした。
 職員からいらなくなった服を集め、市内の地域包括支援センターに洗濯機がないかを呼びかけ、無償で提供してもらいました。現在、Aさんは週二回ヘルパーを利用し、きれいになった住居で生活しています。
 今回のケースではたくさんの人の厚意に触れ、支援における『絆』の大切さを感じました。

(民医連新聞 第1517号 2012年2月6日)

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