医療・福祉関係者のみなさま

2011年11月7日

フォーカス 私たちの実践 医療安全対策をすすめよう(4) 大分・デイサービスすこやか 客観的評価に基づく対策表と情報の共有で転倒を予防

 今回は、介護分野発の安全対策です。利用者の転倒事故対策が課題となっていた大分のデイサービスすこやかでは、多職種の協力を得てこの問題に向き合い、転倒事故を減らしています。田端美香さん、佐藤圭亮さん(現・竹田診療所)の報告です。

事故対策・介助方法を統一

 当施設であげられるインシデント・アクシデント・トラブル報告のうち、毎年三割程度が利用者の「転倒」に関するものでした。なかには、骨折して入院する 深刻なケースも発生していました。事故が起きるたびに対応策を話し合い、再発防止に努めてきましたが、未然に防げる事故も多いのではと考え、二〇〇八年七 月から対策にとりくみました。
 重点を置いたのは、情報の共有とスタッフ同士の連携です。
 たとえば、転倒事故が多いトイレ介助について検討すると、トイレの中で利用者がコールを押せず、自力で立ち上がれないのに立ち上がろうとして転倒が起き た。介助者が外で待っている間に別の利用者から呼ばれ、その場を離れてしまっていた。介助が必要な利用者がトイレにいることが他の介助者に伝わっていれば 防げる事故だった…という具合です。
 転倒事故が起き、インシデント・アクシデント・トラブル報告書が出された時は、終礼で今後の対応について検討することにしました。そこで決まった対応策 を伝達ファイルで全職員に周知徹底し、再発防止を呼びかけました。
 対応策を風化させないため、常時見守りや付き添いの必要な利用者の介助方法を「転倒対策表」にまとめ、一覧表にしてカウンターに掲示。全職員がそれに沿って介助を行うようにしました。
 介助するスタッフによって、介助の仕方が違うことも明らかになりました。歩行時の介助を、Aさんは両手で支えて行い、Bさんは片側からの介助になっていた、などです。
 そのため、より正確な介助方法の統一をめざし、転倒対策表の歩行介助欄を改善。常時付き添いの有無だけの表記に加え、近位見守りと介助部位についてもわかりやすく表記するようにしました。
 懸案のトイレ介助については、各トイレの扉に鈴のついた腕輪を設置し、利用者がトイレに入っている時は職員の手首等に装着(写真)。別の職員が介助を引 き継ぐ時は腕輪も一緒に引き継ぐなどのルールをつくり、介助中であることの意識付けをしました。
 理学療法士、看護師、介助職の多職種による月一回のリハビリ担当者会議も開き、情報の共有と転倒対策表の見直しも行いました。

客観的データで改善も

 理学療法士が対策に加わることで、利用者への健脚度テストなどを実施し、客観的な評価が可能になりました。歩行器を使用していた利用者について、杖でも 大丈夫ではないかという判断ができたり、反対に杖で歩行している利用者に歩行器の方が有効だとして事故を防げるようになりました。

 カンファレンスを行うことで、情報の共有と統一した対応が徹底できました。転倒対策表に基づいて介助することで、対策を風化させず、継続できるようにな りました。その結果、転倒対策の強化後、受診や入院が必要になる重篤な事故は発生していません。
 転倒リスクの高い利用者を受け入れているデイサービスで、「転倒対策」は永遠のテーマです。今後も、多職種の協力を得ながら、客観的データをとって正し い評価をし、チーム一丸となり、「転倒事故ゼロ」を目指していきたいと思っています。

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(民医連新聞 第1511号 2011年11月7日)

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