副作用モニター情報〈280〉 炭酸リチウム製剤による中毒症状
炭酸リチウム製剤は、治療域が狭いため、血中濃度測定により、中毒症状を回避することが必要です。さらに、血中濃度が明らかな高値でなくとも、リチウム中毒になることがあるので、注意が必要とされる薬剤です。
リチウム製剤は、一般に1.5 mEq/lを超えると中毒域とされ、嘔気、嘔吐、下痢、食欲不振、嚥下困難、粗大振戦、言語障害などが起き、さらに2.0 mEq/l以上では、せん妄、痙攣、不整脈、昏睡などが加わってきます。
この間、当モニターに寄せられた報告で血中濃度値が付記されていたものは、手指しびれ(0.75 mEq/l:以下単位省略)、嘔気・足のふるえ(0.43)、手指振戦(1.15)、振戦(1.19)、振戦(2.08)、下痢・嘔吐(2.6)、歩行困 難・せん妄状態(2.75)、甲状腺機能低下(0.8)、横紋筋融解(0.54)でした。血中濃度値が正常域内であっても、中毒症状が起きています。
高齢者や、長期に服用している場合には、血清リチウム濃度が治療濃度域内で推移していても、中毒症状が発現する場合があります。これは、リチウム排泄能が低下し、高濃度・持続的に脳および各組織の細胞内に蓄積し、中毒症状が発現するためと考えられています。従って、定期的に血中濃度を測定するとともに、 測定値が治療域内であっても中毒症状の発現に注意することが重要です。
また今回、当モニターに炭酸リチウム製剤とセレネース併用例で、悪性症候群が起きたとの報告がありました。両剤を併用すると、リチウムの血清中濃度が治 療域であっても、悪性症候群や横紋筋融解症、その他の中毒症状を引き起こす危険性が高くなることが知られており、併用は避けるべきです。
(民医連新聞 第1418号 2007年12月17日)
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