医療・福祉関係者のみなさま

2011年10月17日

フォーカス 私たちの実践 手術室の災害対策 宮城・坂総合病院 3件の手術中に起きた揺れ マニュアルに沿って冷静に対処

 東日本大震災発生時の手術室の様子と、手術室防災マニュアルについて、坂総合病院手術診療部長で麻酔科医の土村まどかさんに報告してもらいました。

落下したモニター

 三月一一日の地震発生時は、婦人科、外科、整形外科の三件が手術中でした。私は婦人科の腹 腔鏡下付属器切除の麻酔を担当していました。手術開始から八分後、震度六の激しい揺れで電子カルテのPACS用モニターが床に転落、保温庫のドアが開き、 点滴ボトルが散乱しました。八人の医師や看護師は手術台から患者が落ちないように固定し、モニターや点滴スタンドを押さえました。
 「一番、大切なことは患者の安全」と、とっさにできることを判断、「無影灯を患者の上からずらす」「自動ドアを開放する」などを指示しましたが、執刀 医、看護師が既に訓練やマニュアル通りに適切に対応。患者やスタッフに被害はありませんでした。
 揺れが収まってから、手術継続の可否を判断しました。婦人科は腹腔鏡のポートが二本入ったところで、まだ腫瘍にメスが入っていなかったため中止。家族に 説明後、閉創しました。外科は直腸がん手術が終了間際だったため、急いで終了。整形外科の鎖骨骨折手術は続行し、三〇分後に終了しました。
 術後、停電でエレベーターが止まっていたため、患者は二階の手術室から五、六階の病室までスタッフが階段で運びました。予想外だったのは、六部屋ある手 術室のうち四部屋の電子カルテ用モニターが棚から落下したこと。固定方法については現在検討中です。

活きた初動フロー図

 当院は二〇〇九年一〇月、大規模災害を想定した「手術室防災マニュアル」を作っており、一一年一月にバージョンアップしたところでした。一〇年四月には手術室で震度七を想定したシミュレーションを実施し、マニュアルに基づいた「地震発生時初動フロー」()を作成していたため、落ち着いて対応できました。
 地震発生時と手術中断後の対応をシミュレーションし、執刀医、麻酔科医、看護師(外回り、器械出し、フリー)の各スタッフの役割を具体的に指示しています。

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在宅酸素患者の受け入れも

 震災後一週間は予定手術を延期、緊急手術のみを行いました。三月一六日に臨時の手術室運営 委員会を開き、スタッフの体制、手術室の器材の在庫や滅菌手段などを確認、手術態勢を検討しました。震災後、早い段階で情報を共有して方針を決めたこと で、その後の運営がスムーズになりました。
 一七日以降は当日でなくてもよい手術を準緊急手術とし、準緊急手術と緊急手術を一列ずつ行う態勢に。三月一一日から二一日までに行った手術は、帝王切開六、整形外科五、その他二でした。
 震災で近隣の病院が手術不能になり、多数の手術目的の患者が当院に紹介されました。ところが、院内の滅菌釜は使用不能に。滅菌済みの器械数により手術件 数は制限されます。そこで、滅菌物は業者に依頼して秋田まで運んで滅菌してもらうとともに、滅菌済みの器械残数を院内に掲示し、受け入れ態勢を整えまし た。
 手術以外でも手術室を活用しました。ICUの二床が水漏れで使えなくなり、患者二人を手術室で引き取りました。また、停電や津波で在宅酸素や人工呼吸の 器機が使用不能になった在宅患者も多く、続々と当院に搬送されたため、リカバリー室で管理しました。

(民医連新聞 第1510号 2011年10月17日)

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