医療・福祉関係者のみなさま

2011年10月17日

共同組織拡大強化月間スタート! 地域に出ないと分からない 中断患者対策を見守りにつなげて 鹿児島・谷山生協クリニック

 鹿児島市にある谷山生協クリニック(鹿児島医療生協)は開設以来、専門外来別に患者会や患者訪問などのグループ活動を行っていま す。一〇月からスタートした「共同組織拡大強化月間」中は中断患者訪問を意識的に位置づけています。この訪問で掘り起こした“気になる高齢患者”の見守り を、医療生協組合員さんにつなぐなどの経験もありました。安心して住み続けられるまちづくりに民医連の事業所がどう関わるのか、ヒントになるとりくみで す。(安丸雄介記者)

 九月二八日、循環器グループの訪問に同行しました。クリニックの循環器外来には約二四〇〇人が登録されていますが、治療中断は月約三〇〇人。中断対策は電話や手紙と訪問です。訪問の対象は、看護師がピックアップした特に気になる患者さんです。
 一軒目のAさんは八〇代男性。三年前に舌がんと胸部大動脈瘤を手術して通院中です。最近、妻を亡くしてひとり暮らし。介護保険サービスをもっと利用しま せんかとすすめても、断っています。治療中断はしていませんが、生活の様子を見る必要がありました。
 「人との関わりを拒否しているのでは?」と心配していましたが、Aさんは「食事などの日常生活が問題なくできていますか」などの職員の質問に終始笑顔で 応じました。帰り際には「デイケアは毎日通えるのか?」とAさんが質問。外に出たいが、県外での暮らしが長く、知り合いが少ないのだと話しました。「デイ は明るいし、友だちもできます」と話すと興味を示し、さっそく担当ケアマネと相談することになりました。

高齢者は訪問がいい

 二軒目に訪問したBさんは、糖尿病と高血圧で通院中の七〇代の女性です。認知症があり、処 方したインスリンがまだあるはずの時期に「足りなくなった」と頻繁に来院します。血糖コントロールも良くないのが気になりました。診察の予約も忘れがち。 身寄りもなく、薬の管理が難しいと思われました。
 訪問すると、部屋には手つかずの薬袋が五つも。「冷蔵庫に入れたのを忘れていた」と、Bさん。翌日、包括支援センターと薬局の職員とで話し合いが持たれました。
 これまでBさん宅には四回訪問して会えず、この日初めて会えました。
 独居の高齢者は、難聴のため電話に出ない、視力が低下して手紙を読まない、認知症があると顔見知りの声かけにしか答えてくれない、といった人も少なくありません。
 クリニック総看護師長の園山双葉さんは「有効な協力者がいない場合、中断対策に自宅訪問が大切なんです」と言います。
 鹿児島県は、六五歳以上の高齢化率が二九・六%と全国平均より高く、高齢独居者は三三・七%。高齢者二人暮らしが三四・九%と「独居予備軍」が多い地域。「老老介護」も目立ちます。

見守りを組合員さんが

 見守りの必要な高齢患者さんの中断対策に、医療生協組合員さんの力を借りることもありました。
 「訪問すると、予約した診察日に来られないのは、認知症のためと分かりました。その時、隣家から出てきた医療生協の組合員さんとばったり。それでこの患 者さんの見守りをお願いしました。定期的に声をかけてくれ、その患者さんは中断しなくなり、元気になりました。けれど、これは偶然うまくいったケース。組 合員さんも巻き込んだネットワークづくりはこれからの課題です」と園山さん。
 鹿児島医療生協組織部の竪山清隆課長は「訪問活動は、年間六万件になる街角健康チェックとあわせて地域の健康度を高め、ひとり暮らし高齢者を孤独死から守るまちづくりの一環にもなる」と話しました。

職員も学ぶ機会

 クリニックの看護師たちは、強化月間中、毎朝「気になる患者一分間スピーチ」を行います。患者さんの社会背景や問題を共有しよう、とのねらい。
 鹿児島医療生協としても、強化月間中は全職員が健康チェック、地域の班会、署名行動などに参加するようにしています。これらの行動を「民医連、医療生協の病院で働くことの意味を学ぶ機会に」と位置づけています。

(民医連新聞 第1510号 2011年10月17日)

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