民医連新聞

2007年10月15日

第9回 共同組織 活動交流集会 平和と命かかげいま出番 2000人つどう

 第九回共同組織活動交流集会を九月三〇日~一〇月一日、長野県松本市で開き、約二〇〇〇人が参加しました。一昨年の岡山集会から 後の、健康づくりと健診活動、助けあい運動、暮らしや医療・福祉制度をよくする活動、平和と環境を守る活動、民医連の事業所を守る活動などの発展を、交流 し学び合いました。開催地の熱烈な歓迎を受け、文化や自然を味わい、参加者は「共同組織強化月間」で仲間を増やし、後期高齢者医療制度など、医療破壊に立 ち向かう元気を養いました。

 「出会いが人を変えます。新しい出会いに期待を」。二日目の全体会は、共同組織の未来を示すような開会宣言で始まりました。
 前日は八つのテーマで、二一の分科会が行われ、合わせて二八〇題の発表がありました。各会場で活発な意見交換や討論が交わされました(別記)。
 それらの模様にふれ、長野民医連の束原進会長は「生きいきした活動の様子に、連帯の力、民主主義の力を感じた。これを明日の力に」とのべ、歓迎しました。
 一〇月一日からは「共同組織強化月間」。現地実行委員長の磯野博康さんは「格差と貧困、戦争する社会でなく、人間らしく生きていける社会へ。憲法九条を 宝に、夢をつかみ取るために仲間を増やそう。私たちはそのトップランナーとして奮闘することを誓おう」と呼びかけました。
 松本市の菅谷昭市長が歓迎あいさつしました。外科医でもある市長は「チェルノブイリ原発事故の際、五年間、支援に携わった。そのなかで生命の平等と医療の普遍性を痛感した」とのべ、参加者の拍手を浴びました。
 全日本民医連を代表して原和人副会長があいさつ。情勢と民医連の課題をのべました。
 共同組織全国連絡会の代表委員・亀田良典さんが基調報告しました。岡山集会以降の共同組織の広がりを確信にし、まわりの人と手をつなぎ、今こそ憲法九条・二五条を輝かすため、奮闘しよう、と力強く報告しました。
 記念講演は、作家の海老名香葉子さん。「いま四七歳です。気丈夫に生きています」とまず笑わせ、噺家(はなしか)の一家をささえる母としての生活をユー モラスに語りました。そして話は、幼いときの幸せな生活を地獄に一変させた東京大空襲におよびました。
 笑わせ、泣かせ、参加者の心を惹きつけました。「戦争してはならない」の共感が会場に満ち、涙と拍手に包まれました(八面)。
 リレートークでは五人が発言しました。経済的な困難や災害に負けない、助け合える仲間づくりをすすめ、地域の中に存在感を強めている共同組織の姿を、語りました(別記)。
 最後に、「明日から実践に踏みだそう」とのまとめを確認しました。参加者の感想には「今までで最高」「次は発表したい」など感動がいっぱいでした。次回の開催地は長崎です。

平和と憲法を守る

 「九条の会」結成の苦労や活動が紹介されました。
 群馬の「利根沼田九条の会」では、映画「日本の青空」の上映で財政活動し、収益を使い、国道沿いに「九条を守ろう」と大看板を立てました。
 兵庫・東神戸医療互助組合理事の金場俊雄さんは、「健康チェック」を通して九条の会の賛同者を増やした経験を報告しました。
 「阪神大震災など、震災は避けられないが、戦争は避けられる。急がず休まず、粘り強い活動を続けよう」と訴えました。
 参加者は「私たちも国民投票までに過半数の賛同を得るため、一軒一軒を訪ねるローラー作戦をしなければ」と感想を語りました。
 二会場に約一八〇人が参加、二三演題でした。
(第一分科会)

医療制度よくする

 地域の医療崩壊、国保、高齢者医療制度などで発言がありました。
 妊婦の死亡事故が続いた奈良から「医療コーディネーター配置に予算が付いた。お金がなくて妊婦健診が受けられないことも問題の背景」との報告が。
 熊本・八代健康友の会は八代総合病院の整形外科縮小を、五万筆の署名を集めてくい止めました。
 新潟市では、国保直接請求署名は否決されましたが、一般財政からの繰り入れと四〇〇〇万円の低所得者対策予算が実現しました。
 餓死事件の起きた北九州市の友の会は「会員を増やし、相談取次所のステッカーをたくさん張り出したい」と発言しました。
 北海道・宗谷友の会は、一〇周年の事業で「憲法の精神に基づき、医療・福祉・教育の施策を」の署名と自治体決議にとりくみました。有権者の四割弱一万三 〇〇〇筆を集め、満場一致で採択。友の会と市民の結びつきを強めました。
 北海道・十勝では、高齢者医療制度について国に意見書を出すよう一市一八町村に請願し、八自治体が採択しました。二二〇の老人会のうち一〇〇を訪問して 署名を集めています。会場からも「老人クラブがカギ。決議を上げてもらい、撤回させる力にしよう」との発言がありました。
 二会場に約一五〇人が参加、二一演題でした。
(第二分科会)

健診・健康づくり

 小西恭司全日本民医連副会長のミニレクチャーから始まりました。特定健診・特定保健指導などの問題点を話し、「共同組織とともにすすめる健康づくり」について提案しました。
 発表では「私の健康法」「大腸ガン検診のとりくみ」「健康チャレンジ」など、どれも豊かな内容でした。
 青森保健生協では、早朝組合員健診やセラバンド体操の普及を報告しました。
 神奈川北央医療生協では、子育て中の母親を対象に「保育つき健診」を行い、受診者全員が組合員になりました。医療生協を若い世代に広げるきっかけにもなっています。
 四会場に約二〇〇人が参加、四〇演題でした。
(第三分科会)

環境をまもる

 徳島の産業廃棄物処分場問題、有明海の干拓事業、アスベスト問題について、共同組織の関わりが報告されました。また、二酸化窒素の測定運動、新潟水俣病のとりくみなど、各地の現状が報告されました。
 地域特有でなく、どこでも起きる問題です。
 東京大気汚染裁判の勝利和解の意義について発言がありました。国に新たな環境基準づくりをする義務が生まれました。
 発表者は「民医連の事業所、共同組織、患者会が共同して運動した成果だ」と強調しました。
 一会場に約一〇〇人が参加、八演題でした。
(第五分科会)

夢を実現する

 地域の要求に応える事業所づくりを交流しました。
 千葉・南浜診療所健康友の会は、特別養護老人ホームをつくる運動を報告。
 長崎健康友の会は、「医療・介護・住まい・子育て」の総合福祉施設「ふくし村」建設について報告しました。多世代多機能施設です。健友会の職員とともに七億四〇〇〇万円の協力資金募集にとりくみ達成しました。
 京都・中右京健康友の会では、医師や看護学生などの面接教育に協力する模擬患者として、一〇人が活動しています。看護部門や医療安全委員会などから依頼 があり、期待に応えようと研究しています。医学生向けにも活動し、「民医連の医師になってくれた時は、本当にうれしい」と話しました。
 二会場に計一三〇人が参加、二七演題でした。
(第七分科会)

まちづくりで前進

 高齢者のたすけあい、子育て支援などボランティア活動、バス路線の存続や、駅のエレベーターなどを、行政にも働きかけ改善させた経験が報告されました。
 千葉のNPO法人「なのはな」は、他のNPO法人と協力し市に働きかけ、運輸局から福祉有償運送車両の認定を受け、移送ボランティアを展開しています。
 移送について、安全問題やボランティア確保の工夫など様ざまな経験が出され、交流しました。
 北海道・帯広市では、〇五年、上下水道を停止する「滞納期間」を一年から半年に縮め、上下水道を止められる人が急増。五〇代の女性は、公園から水を汲ん で半年間生活していました。市議会に陳情書を提出し、昨年九月に、水道料の引き下げと分納制度を勝ちとりました。
 五会場に約三五〇人が参加、七三演題でした。
(第四分科会)

共同組織つよめる

 サークル活動や食事会など多彩な活動を通じて、仲間を増やしている経験が報告されました。
 奈良の土庫病院友の会では、カラオケ教室や大正琴、水彩画などのサークルが「活動家づくりにつながる」という発言でした。
 友の会組織での会費徴収の是非について、たくさん意見が交わされました。「会費を払えない人が増えていることを踏まえて徴収を止めた」、「求められる助 け合い活動をささえる資金を確保するためにも、会費徴収は必要」という意見などが出ました。
 五会場に約三五〇人が参加、六六演題でした。
(第六分科会)


「民医連の歴史」のテーマには約七〇人が参加しました。講師は全日本民医連の長瀬文雄事務局長でした。


地域に存在感 列島リレートーク

 リレートークは、千葉健康友の会の松永悦子さんが全国の特徴をのべ、各地の四人がとりくみを報告しました。

要介護者の障害者控除を

十勝勤医協友の会 石沢英子さん

 帯広市に「障害者の税金控除の認定書」発行を求め運動しました。市議会に要請し、自治体の担当者とよく話し合い、まわりの町の情報を伝えました。
 認定第一号は当時九一歳の人でした。特別障害者控除と扶養控除などが九三万円になり、約九万円の税金が戻ってきました。
 地元紙が何度も取りあげ、新聞を読んだ住民が友の会や社保協に問い合わせをしたり、直接申請に行く人もいました。
 〇二年度に発行された認定書は六市町村計八七件。〇六年度は二〇市町村七四九件に広がりました。

健康づくりで自治体訪問

医療生協さいたま 間仁田一恵さん

 「地域まるごと健康づくり」をともにすすめる立場で自治体を訪問し、支部活動をアピールしてい ます。 〇四年度は九二自治体中、三四を訪問。懇談の中で、健康チェック機材の「日本横断歩け歩けマップ」を紹介したら、独自に歩け歩けマップを作成した 自治体もあります。出前講座に自治体から講師が派遣される関係もできました。
 〇六年六月に「医療制度改革関連法」が成立してからは、特定健診・特定保健指導の実施について、七五歳以上の高齢者の健康診断を住民負担を増やさずに実施できるよう要求していくなどを課題にしています。
 これまでの保健予防事業を後退させないよう働きかけていきます。

たすけあい基金を立ち上げて

奥能登健康友の会 矢沢幸恵さん

 ある夫妻は、二人の国民年金あわせ月五万円で暮らしています。電気代の七〇〇〇円は、夫の在宅酸素療法の命綱。妻の医療費の負担がたいへんでした。
 経済的に困難な人に無料・低額で診療する事業を石川勤医協の診療所は実施しています。しかしこの事業では院外処方の薬代はカバーできません。そこで、友 の会は、「たすけあい基金」をつくり援助することにしました。寄付金と積み立て金、『いつでも元気』の還元金を充当しています。
 また、「医療・介護なんでも相談」の窓口を広げるため相談連絡所のステッカーを六〇カ所に張り出しています。この月間で一〇〇カ所をめざします。

命どう宝を訴えつづける

沖縄医療生協 屋良博一さん

 「辺野古に米軍の新基地をつくらせない」と、オジーやオバー、県民といっしょに座り込み、たたかい続けています。全国の支援に励まされています。
 今年五月、海上自衛隊は掃海艇(機雷除去作業船)を出動させ、環境アセスを権力総動員で強行しました。調査では標識灯や音波発信機器が設置され、ジュゴンへの影響が心配です。
 嘉手納基地を早朝から飛び立つ戦闘機の騒音公害に、周辺の市町村長が抗議しています。基地司令官は「抗議するのは沖縄だけ」「一〇年先も続く」と返答しました。
 命を奪う加害者にも被害者にもならないよう、改憲に反対する共同と連帯を大きくしましょう。

(民医連新聞 第1414号 2007年10月15日)

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