民医連新聞

2007年10月15日

連載 安全・安心の医療をもとめて(57) 回復期リハビリテーション病棟での排泄と転倒・骨折防止(第2回) 「自立重視型排泄アプローチ」の実践(2) (長野中央病院 中野友貴リハビリテーション科医師)

 ポータブルトイレを使わないと宣言する有名なリハビリ病院があります。音や匂いが居室の中で発生するのは人権に反するというのがその理由です。いつも「既設トイレ」に介助で連れて行かなければなりませんから、『既設トイレ誘導重視型排泄アプローチ』と呼んでみました。
 当院の方法は「ポータブルトイレはどんどん使え」というもので、先の考え方と一八〇度違います。これを『自立重視型排泄アプローチ』と呼んで図4に整理してみました。

移乗能力の進歩に合わせた排泄動作

 移乗動作が進歩するに従って、排泄動作がステップアップしていきます。ベッドから起き、立って移れるようになった段階でポータブルトイレの排泄自立が許可されます(第一のステップ)。
 次に、車イスのブレーキをかけ、立ち上がる前にフットレストからの足おろしを忘れずにでき、立って安全にパンツ操作ができて、はじめての車イストイレが 許可されます(第二のステップ)。「介助では車イストイレを使わない」を徹底していることが重要なポイントです。
 歩行が自立したら、洋式トイレ使用を勧めます。しかし、夜間など必要に応じてポータブルトイレや車イスでのトイレ使用を続けます(第三のステップ)。

入院時食事自立してれば排泄自立の可能性が高い

 図5は、「どんな入院時のADLレベルなら排泄自立するか」という問題意識でまとめたものです。
 入院時にポータブルトイレが自立しているIII群以上のADL群は退院時には、ほとんどの人が歩行してトイレ可能です。
 注目は、入院時に「食事摂取のみ自立していて他のADLは介助」のIV群レベルです。退院時に排泄介助だったのは一四%のみで、多くの人は重度認知症でした。実に、残りの八六%が何らかの排泄自立をしていました。
 つまり、入院時排泄介助でも、食事摂取が自立していれば、このアプローチで何らかの排泄が自立する可能性が高いとみることができます。

排泄自立の各段階の到達率

 図6は、入院時食事摂取のみ自立のIV群について、排泄自立の各ステップにどの位の患者が到達するかまとめたものです。
 IV群の八三%が、平均二二日で第一のステップ(ポータブルトイレ自立)に到達します。第一から第二のステップ(車イストイレ自立)にすすむのはその六 四%で、平均二〇日かかりました。最後の第二から第三のステップ(歩行レベル)にすすむのはその七二%で、平均一五日かかっています。 
 当院のアプローチは、「少なくても排泄を自立させて」という患者・家族の悲願に応えるものです。排泄自立できる可能性を漏らすことがありません。尿便意 が無くても、ポータブルトイレで誘導している内に尿便意が出てきて自立する方がいます。ポータブルトイレをどんどん使い、自立度を上げましょう。

(民医連新聞 第1414号 2007年10月15日)

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