医療・福祉関係者のみなさま

2011年10月3日

相談室日誌 連載336 家族を含めて患者を「丸ごと」支援して 洲脇裕香(神奈川)

 腰椎圧迫骨折で入院したAさん(八〇代女性)は、五年ほど前に仕事を辞めた次男と二人暮らしです。
 Aさんのリハビリが進み、退院が近づいたころに長女から相談が。次男は手指の変形や歩行が不安定な状態で自宅に引きこもっていて、入院前は母親のAさん が世話していました。そのため、退院後は介護が必要になったAさんともども生活が心配だということでした。
 長女が次男にAさんの退院後を相談しても、「どうにかなる」というだけで、兄妹間ではなかなか話せないこともわかりました。また、次男が自身の障害に関する受診を拒否していることも、長女は心配していました。
 家族間では、深刻な問題に目を背け、なかなか話が進まないことがあり、「うるさい」「ほっとけ」で会話が終わる場面も想像できました。
 Aさんの面会や病状説明に来るのは、長女だけだったため、相談室から今後Aさんの退院について話す時には次男も呼び、考えを聞いてみることにしました。
 次男と初めて面接すると、身体の障害は明らかでした。手指にリウマチのような変形があり、本人にも支援が必要だと分かりました。こちらの質問にそっけな く答え、横を向いてしまうこともありました。しかし、「身体が痛くて、母を支えられない。だからトイレだけは行けるようになってもらいたい」と話しまし た。
 退院準備が進む中で、Aさん本人を含めたカンファレンスが行われました。カンファレンスでは、Aさん以上に次男の身体状態について、話が集中。その力に 押されるように次男は受診を決意しました。その結果、かなり進行したリウマチとの診断でしたが、次男は通院するようになり、表情も和らぎ、拒否していた支 援も少しずつ受け入れるようになってきました。
 Aさんと長女は「患者以外の家族のことも含めて考えてもらえて、家族ではどうにも解決できなかったことがようやく動き出しました」と言ってくれました。 援助者が関わることで動き出した二人の生活を、今後も見守っていきたいと思います。

(民医連新聞 第1509号 2011年10月3日)

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