医療・福祉関係者のみなさま

2011年9月19日

“ヤーまでん来て 安心えーびぃさ” 名護市にオープン半年目 やんばる協同クリニック

 沖 縄本島北部の民医連の拠点として、今年四月にオープンしたやんばる協同クリニック(名護市)。地域ニーズに応えて訪問診療に力を入れ、開設半年で在宅患者 は約四〇人に。「ヤ~までん来て、安心え~びぃさ(家まで来てくれて、安心です)」と喜ばれています。また、米軍基地を巡るたたかいの砦としても期待され ています。(新井健治記者)

 名護市北部、シークヮーサー農家の我喜屋かの子さん(89)の自宅は、細い道をうねうねと 登った丘の中腹にあります。慢性閉塞性肺疾患で在宅酸素療法中の我喜屋さんは、以前は県立病院に通っていましたが、診療は半日がかりで、途中で携帯用酸素 の電源が切れてしまうこともありました。
 やんばる協同クリニックは五月から我喜屋さんの訪問診療を始めました。「ここまで来てくれる医師は、なかなかいません」と介護する嫁の恵子さん (60)。我喜屋さんはたびたび呼吸困難になります。「家族では救急車を呼ぶべきか判断に迷いますが、いつでも先生に相談できるので安心」と言います。
 名護市の郊外や周辺の町村は高齢化がすすんでいます。在宅医療を手がける医療機関や、医療依存度の高い高齢者を受ける介護施設はともに少なく、やむなく 那覇市など遠い南部の介護施設に入所させる家族も少なくありません。
 クリニックの島津光邦所長は「医療の支援がないために、苦労している患者や家族が多いのが現状です。自宅で療養できるようクリニックでバックアップし、 患者さんには元気で良い人生を送っていただきたい」と言います。
 クリニックから約二〇キロ離れた今(な)帰(き)仁(じん)村(そん)に住む島田花子さんは一〇四歳。誤嚥性肺炎で入院し、退院後の八月から訪問診療を 受け始めました。次女の島田和子さん(65)は「地元の医療機関からは午後六時以降の往診を断わられたので、困っていました。本人は住み慣れた家で最期を 迎えたいと言います。クリニックは頼みの綱で、ありがたい」。
 近隣でも一〇〇歳前後の高齢者は珍しくありません。和子さんは「沖縄北部には療養病床が少なく、高齢者を抱えて大変な家族が大勢います。クリニックは オープンしたばかりで、まだ知られていない。口コミで宣伝したい」と言います。

街角健康チェックでPR

 約五〇〇平方メートルと広々としたクリニック内には、経鼻内視鏡室やレントゲン室、心電図 室など設備が充実しています。沖縄医療生協では初めて、専用の組合員利用室を設け、オカリナ教室や囲碁・将棋サークルが利用。毎週木曜日には、「名護市生 活と健康を守る会」が無料生活相談を開いています。
 在宅患者は順調に伸びていますが、外来患者が増えないのが悩みのタネ。医療生協名護支部副支部長の長山豊守さん(64)は「たとえ組合員でも、かかりつ け医を変えるのは勇気がいります。患者が増えるには、もう少し時間がかかるのではないか」と指摘します。
 クリニックをPRしようと、職員は名護支部とともに市内の農協前や大宜味村、伊江島で街角健康チェックを行い、七月からは健康ウオークも始めました。名 護支部支部長の東(あがり)江(え)英明さん(64)は「二〇〇〇人の組合員を目標に二カ年計画を立てました。一〇月から始まる共同組織強化月間でも、組 合員増やしと増資にとりくみたい」と意欲満々です。
 クリニックには「国保料が高くて払えない」といった相談も入ります。名護支部は生活と健康を守る会や名護民主商工会と協力し、組合員宅訪問も予定しています。

基地反対で平和の砦にも

 名護市には米軍新基地建設予定地の辺野古があり、同市より北部にある東村高江では、政府が米軍機の着陸帯(ヘリパッド)の建設を強硬にすすめようとしています。クリニックは米軍基地に反対し、平和を守る砦でもあります。
 辺野古の「ヘリ基地反対協議会」共同代表で、組合員の大西照雄さん(68)は「日本の基地問題の象徴ともいえる名護に、民医連の拠点ができた意味は大きい」。
 大西さんは二〇〇四年から二三次にわたって行われてきた民医連の辺野古支援・連帯行動で、講師や現地案内を務めてきました。「現場を見ることで社会を見 る目が変わる。今後も若い感性に響くとりくみを続けたい」と話します。

ともに健康・長寿のまちを

稲嶺進・名護市長

 県民の「健康をつくる、平和をつくる」との思いで設立されたやんばる協同クリニックが、開設からはや半年を迎えました。
 名護市は「健康・長寿のまち再生」を掲げ、市民が健やかに安心して暮らせるよう、疾病予防対策とともに、医療機関と連携して早期発見・治療を推進しています。
 やんばる協同クリニックが無差別・平等の医療提供はもとより、これまで同様、市民の健康保持や予防に対する意識の啓発、普及にご尽力いただきますようお願いするとともに、さらなるご活躍を祈念します。

(民医連新聞 第1508号 2011年9月19日)

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