医療・福祉関係者のみなさま

2011年9月5日

命の問題は自治体の責務 無低患者に全国初の薬代助成 高知市 岡崎誠也市長に聞く

 評議員会では、無料低額診療事業の発言が多数ありました。事業を通じて「患者になれない病人」を掘り起こし、社会保障制度改善の必要性を再確認す る機会にも。一方、保険薬局は無低事業の実施主体になれないため、院外処方は減免ができません。そんな中、高知市は今年四月から、全国で初めて無低診利用 者の薬代助成措置に踏み切りました。同市には県内で唯一、無低事業を実施している潮江診療所があります。岡崎誠也市長に話を聞きました(聞き手・斉藤千穂 『民医連医療』編集長)。

■助成を始めた理由

 無料低額診療事業が創設された当時(一九五一年)は院内処方で、薬代も減免の対象でした。医薬分業政策で院外処方の薬代が減免されなくなったのですから、その時点で国は無低事業の改定も行うべきだった。制度改定が抜けたまま、現在に至ったわけです。
 当市で助成を始めましたが、本来は国が責任をもって行うべき。しかし、人の命や健康にかかわる問題なので「国の制度改定を待たずに、自治体ができることはやろう」という考え方です。
 潮江診療所は二〇〇九年一〇月に無低診を始めて以来、経済的に困窮した患者さんの厳しい実態や、病院に行きたくても行けない人が多くいる実情を、私たち に報告して下さっています。「命が危険にさらされないよう、救いあげなければいけない」と、強く実感しています。

■生活保護につなぐ想定も

 市の薬代助成の期限は初診から二週間です。制度を検討する際、二週間か三週間か一カ月か、悩みました。
 「二週間」は、受診された方の経済状況が好転しない場合、生活保護につなぐことを想定した結果です。生活保護法では、保護の申請から決定までの処理期間 が二週間です。二週間目の受診で処方された場合も助成の対象なので、実際には三週間から一カ月分の薬代の助成になると思います。

■「無低診」浸透はこれから

 私は全国市長会の国保対策特別委員会に所属しています。無保険や保険証があっても窓口負担が重いために受診できない市民がいることについて、多くの市長さんが認識しています。ところが、無低診はほとんど知られていません。
 国民健康保険中央会の会長職もお預かりしていますし、政府の社会保障審議会医療保険部会のメンバーです。機会があれば、無低診について発言していきたい。

※潮江診療所の無料低額診療事業
 無低利用者は診療所の窓口で処方箋を受け取る際、高知市の院外処方箋の申請書に記入し市の指定した保険薬局へ持参。薬局は患者に薬代を請求せず、市に申 請書を送って後日振り込みを受けるしくみ。高知市がこの助成で拠出しているのは月平均二万円程度。
 潮江診療所の岡村啓佐事務長は「無低診の利用状況や、無低事業で見えてきた患者の実態を記者会見し、市に報告することで、薬代助成につながった」と話します。

(民医連新聞 第1507号 2011年9月5日)

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