医療・福祉関係者のみなさま

2011年8月15日

フォーカス 私たちの実践 長野県民医連・災害対策調査 災害時の備蓄を総点検 県連が各事業所を調査

 いつどこで起きてもおかしくない大災害。「備え」を見直すことが必要です。今年五月、長野県民医連では県連内の病院(六カ所)、診療所(一〇カ 所)、老健・特養施設(七カ所)の自家発電と食糧・水などの備蓄状況について、調査を行いました。五月三○日時点の結果について報告します。

 震災後まもなく、坂総合病院で「水道は地下水で使用可能。水洗トイレも使えている。麻酔、酸素が切れかけたり、重油の供給体制がなく、自家発電があと一日持つかどうかの瀬戸際まで追い込まれた」という報告がありました。
 震災体験にはさまざまな教訓がありますが、坂総合病院が未曾有の大震災の中で災害拠点病院として地域での医療機能の役割を果たすことができたことに学ぼうと、まず自家発電などの災害時の準備状況を県連で把握し、改善に向けて今回の調査をとりくみました。

調査結果

〈(1)自家発電〉
 病院…六病院全てが備えており、最長が上伊那生協病院(一四四床)の二九時間でした。最短の病院(一八三床)は二時間で、同院では今後は三日分の燃料確 保を検討中です。このほか、長野中央病院では、自家発電燃料の軽油を含め、病院外で備蓄倉庫の確保を検討する必要があると回答しています。
 また、その自家発電機が検査機器などにつながっているかどうかを確認したところ、レントゲンや電子カルテなどの基本的な機器はつながっている事業所が多 かったものの、事業所ごとに配備状況が分かれていました。今後、電子カルテにつなぐ予定の事業所もありました。
  介護事業所…最大稼働時間は、一四日間と回答した特別養護施設でした。しかし一方、自家発電機を配備していない事業所もありました。また、簡易発電機を数 台購入することを検討し始めている事業所もありました。なお、自家発電とつながっている機器に関してはスプリンクラーだけの事業所や、何もつなげていない という事業所もありました。
 診療所…回答した全事業所が配備していませんでした。

〈(2)食糧の備蓄〉
 病院…六病院のうち五病院が備えており、三病院が備蓄量最大で一〇〇人×三日分でした。内訳の一例として塩尻協立病院(九九床)では、常食四〇人、ミキ サー食二○人、経管栄養四〇人分を備蓄していました。このほか、健和会病院が通常一五○人分を備蓄していたものの、震災支援で放出したために調査時点で六 ○人分のみとなっており、これから補充する予定になっていました。
 介護事業所…職員・利用者ともに備蓄している事業所は、七事業所のうち三事業所でした。対応期間は一~三日間。利用者の分だけを備蓄していた事業所もあり、今後は職員用の非常食も検討しています。
 診療所…回答した全事業所が備蓄していませんでした。

〈(3)水の備蓄、(4)対応方法〉
  病院…一〇〇人×三日分が最大であり、備蓄していない病院も一カ所ありました。井戸水で対応する、としている病院は二カ所で、今回の震災を契機に井戸の設 置を検討するという病院もありました。また、上伊那生協病院では、以前、井戸のポンプに異常があった際、町へ依頼して消火栓からの給水(上水道)や、給水 車の依頼も経験しています。
 介護事業所…五〇〇ミリリットル×二四〇本分(一~二日分)を備蓄、若干の備蓄のみ、「貯水槽で対応して給水車を待つ」など、備蓄量や対応方法も分か れ、全体として不十分な量でした。さらに、水の消費期限切れが判明した事業所もあり、新しい水を手配中でした。
 診療所…回答した全事業所が備蓄していませんでした。

今後の課題

 県連事務局長の岩須靖弘さんは今回の調査結果に、「『改善が必要だ』という一言に尽きる」 と語っています。また県連では、今回の調査結果をもとに専務会議や県連常任理事会で議論しました。時間のかかる建物改修を除き、「ただちに手を打てること は早急に手を打とう」と話し合いました。
 現在は集約したアンケート調査の結果を各事業所に報告し、情報共有をしています。今後、各事業所で改善策の具体化が必要です。


調査方法・項目
(1)自家発電機の状況…メーカー・名称、発電容量[kVA]、燃料種類、稼働時間、自家発電につながっている機器(レントゲン・検査機器・電子カルテ・そのほか)
(2)備蓄食糧の状況…患者・利用者用、職員の備蓄食糧(人数×日数分)、備蓄食糧の品名。
(3)備蓄飲料水の状況
(4)上下水道が停止した場合の対応方法
(5)現在検討中もしくは検討予定の備蓄対応の内容

※アンケートを通達とともに事業所へ配布し、県連で集約しました。
(回答した事業所のみ集計)

(民医連新聞 第1506号 2011年8月15日)

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