医療・福祉関係者のみなさま

2011年8月15日

医学対ってなに? 青年記者の突撃取材 東葛病院(東京民医連)

 さまざまな職種が支える医療・介護の現場で、民医連特有の仕事に就く職員がいます。その名は「医学対」。医学生に民医連の魅力を 紹介し、実習につなげたり研修先に選んでもらいます。民医連の重点課題「医師の後継者づくり」を担う重要なポジションです。記者は東葛病院(東京)医学対 の武井和希さん(36)と医学生担当のDさん(25)に、現場を見せてもらいました。(矢作史考記者)

 七月二七日、東葛病院では高校生一日医師体験が行われていました。この企画を取り仕切った のが医学対の二人。「医学対にとって必要なスキルは一%の才能と、九九%の図々しさ」と冗談交じりに語る武井さんは、医学対七年目のベテラン。一方、今年 四月に配属されたばかりのDさんは「普段は、あまり社交的なタイプではないのですが…」と控えめな印象。
 医師体験には五人の高校生が参加。午前中は医師以外の職種から話を聞き、医療現場のしくみを学習。臨床検査技師の講義では、人体を学ぶために臓器の標本を見ました。午後は入院中の病棟患者のもとへ。病気や仕事のこと、家族の話などを聞き取りました。「患者さんに生活歴を聞いたら、気まずい雰囲気になって しまった」と患者と接する難しさを口にした高校生もいました。
 武井さんは高校生に民医連の医療を紹介しました。その中で、こんな話も。「私たちは戦争に反対しています。それは医療に携わっているから。もし、戦争になったら負傷した戦闘員を治療する立場になり、治った戦闘員はまた人を傷つける。こんなことは許せない」。

時にはエコーの練習台に

 高校生が帰ると、今度は医学生を夏休み中の実習に誘う電話がけ。面識がほとんどない医学生も誘います。春、夏、冬の長期休暇を利用した実習で、民医連の医療にふれてもらうのが狙いです。
 忙しい医学生への連絡は、各大学のシラバス(時間割)を見ながら。反応が悪く、途中で電話を切られることもしばしば。それでもくじけず、民医連を売り込 みます。「民医連のとりくみが医学生の心に響くまで、あきらめません」と武井さん。
 実習の約束が取りつけられれば、病院医師と相談しながら医学生の実習プランを作成します。相談相手の医師も多忙。打ち合わせは昼食時を見計らって行いま す。「医学対の仕事は、すぐに成果は表れないもの。だからこそ、電話で誘った医学生の実習が決まると、すごく嬉しい」とDさん。
 実習当日は、医学生の対応で忙しくなります。実習生のエコーの練習に協力して、お腹を出すことも。医師を育てるためなら、すすんで「練習台」になります。
 実習生の中には、民医連の理念に共感して奨学生になる人もいます。奨学生とは月に一回面談し、近況や学生生活について聞きます。時には「兄貴」や「姉貴」のように、プライベートの相談を受けることも。いっしょに食事をしたりしながら、学生特有の悩みにも寄り添います。
 東京民医連は月に一度、奨学生ミーティングを開いています。大学では学べない民医連ならではの学びを援助。県連の奨学生合宿や全日本民医連の「医学生の つどい」では、医学生に付き添います。「全国医学生ゼミナール」にも協力します。

民医連を語りいっしょに成長

医師が身内になる瞬間

 では、医師にとって、医学対の存在とは? 宮崎大学医学部時代に医学対と出会い、現在は東葛病院の一年目研修医、君山愛佳医師に聞いてみました。
 「私が民医連にかかわるようになったのは、医学対の人との出会いがきっかけ。民医連の医療を熱く語り、私がやりたい医療についていっしょに考えてくれました」と振り返ります。
 東京民医連の奨学生になり、民医連の行事に参加する中で、社会問題の背景についても考えるようになりました。「実習生が来た時には、私も積極的に協力したい」と話します。
 最後に、武井さんに質問!! 医学対のやりがいは? 医学対の仕事の中で嬉しい瞬間は?
 「医学生が医師になって、初めて患者さんに感謝された瞬間かな。その時はいっしょになって喜んでいます。学生時代からともに学んできた医師が、身内になる。こんな喜びを体験できるのが醍醐味です」と武井さん。
 懸命に働きかけても、すべての医学生が民医連を実習や研修先に選んでくれるわけではありません。それでも、働きかけること自体に意味があります。
 「民医連の実践を紹介することで、多くの医学生がいい医師になってくれれば医療界全体を良くすることにつながると思います。その一端を担うのが、僕ら医学対の役割。医学生は医療変革のパートナーでもあります」。


医学対とは

 旧医学生対策委員会の略称で、現在は医学生委員会。医学部卒業後2年間の研修を義務づけた 新医師臨床研修制度が施行されてから、医学生は臨床研修指定病院から引く手あまた。そんな中、医学対は2010年の全日本民医連「医師の確保と養成に関す る全国会議」(伊東集会)の提起に基づき活動しています。
 伊東集会は医学対活動の理念として「医学生の民主的成長への援助」と「民医連の後継者対策」を確認。活動の柱として「高校生対策と大学新歓期の活動での つながりを重視し奨学生を確保」「奨学生活動の充実・発展を軸にした奨学生の成長への援助と拡大」「オール民医連によるフルマッチ対策」をあげました。
 医学対の職員は問題意識を深めるために、積極的に情勢を学んでいます。医学生の中には、経済的な問題から受診をがまんする患者がいることを聞いても、に わかには信じられない人もいます。医学生の問題意識に応じて、路上生活者のいる公園でフィールドワークを実施したり、脱原発デモの参加にとりくむ職員もい ます。

(民医連新聞 第1506号 2011年8月15日)

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