医療・福祉関係者のみなさま

2011年8月1日

かあさんの「ほのか」な幸せ~眠りっこ子育てetc.~ (5)「往診」、それは、「子育てエナジー」 文:西村理佐

 帆花の往診医のT先生は、月に1回、クリニックの診療が終わったあと、高速道路を利用して来てくださる。まず帆花の聴診をし、身体の拘縮具合を チェック。その後は一緒におやつを食べながらたっぷり1時間、この間の帆花の体調や心配事を相談したり、「動物園に行ってきました!」と興奮気味に報告し たり、T先生が娘さんと観てきた映画の話を聞いたりもする。いわゆる「往診」とは異なった、ちょっと珍しいスタイルかもしれない。
 3年前、在宅に移行する際、帆花の往診の先生を見つけることはとても困難だった。選択肢は2つ。帆花のような重症小児を診た経験はないが、「往診」を メーンになさっている先生に頼み込むか、「往診」はやっていないが小児科クリニックの先生を口説くか。いずれにしても断られる可能性大。そんな中、私たち 夫婦の理想は高かった。「地域で安心して楽しく暮らす帆花をあたたかく見守ってくださる先生にぜひお願いしたい!」と。
 帆花が体調を崩した時に、すぐに訪問してもらう必要はない。病院に救急搬送するほどではない小さな不調であれば、自分たちが自宅で対応できる自信をつけ て連れて帰るのだから、どう対応したらよいか不安な時に、「気軽に相談できる」先生で、そして何より「長く楽しく生活したい」という私たち家族の願いと共 にずっと歩んでくれる先生に、というそれは夢のような願いだった。だが、それが現実となったのは、まさに一期一会、奇跡である。
 毎回、先生にぶつける、帆花をみていて感じる疑問は、在宅生活3年目になるとかなり突っ込んだ内容になり、先生からのお答えは、私たちだけが聴いている だけではもったいない「講義」さながらの内容だが、何より、同じ親として子育てをする喜びをわかちあってくださる先生との楽しい会話が、私たち夫婦の「子 育て」エナジーとなっている。

プロフィール (にしむら・りさ) 首都圏在住の三○代女子。低酸素脳症で人工呼吸器をつけた娘を子育て中。著書『ほのさんのいのちを知って』(発行‥エンターブレイン)

(民医連新聞 第1505号 2011年8月1日)

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