副作用モニター情報〈356〉 バルプロ酸ナトリウムとカルバペネム系抗菌薬との相互作用
バルプロ酸ナトリウム(以下、バルプロ酸)は、各種てんかん、精神神経系疾患の治療薬として有効性が認められていますが、重要な相互作用が報告されており、使用にあたっては十分な注意が必要です。
バルプロ酸とカルバペネム系抗菌薬(パニペネム、メロペネム、イミペネム、ビアペネム、ドリペネム、テビペネム)との併用は禁忌です。
バルプロ酸とカルバペネム系抗菌薬との相互作用の機序は明らかではありませんが、たん白結合率の競合やカルバペネム系抗菌薬により、肝臓でのバルプロ酸のグルクロン酸抱合代謝が亢進するなどの報告があります。
バルプロ酸の有効血中濃度は、40~120μg/mLです。カルバペネム系抗菌薬の併用で血中濃度が大幅に低下し、けいれんが再発した症例が報告されています。
バルプロ酸とカルバペネム系抗菌薬を併用したことでけいれん発作を誘発した症例を、抜粋し示します(表)。併用前の血中濃度は症例1・2が不明、3は63μg/mLでした。いずれも薬剤師から医師へ問い合わせを行っていますが、感染症治療を優先させるために併用されました。
カルバペネム系抗菌薬との併用時にバルプロ酸の血中濃度をコントロールすることは、非常に困難と考えられます。今回の報告でもバルプロ酸の増量で血中濃度が上がらない例がありました。優先する治療を考慮し、併用薬を変更することが必要と考えます。
(民医連新聞 第1505号 2011年8月1日)
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