医療・福祉関係者のみなさま

2011年8月1日

シンポジウム 「3・11後の日本で福祉国家を展望する」 福祉国家と基本法研究会・福祉国家構想研究会 社会保障は「必要充足・応能負担」で…後藤 政府の復興計画はまるで「火事場泥棒」だ…渡辺

 七月一○日、福祉国家と基本法研究会・福祉国家構想研究会主催の「3・11後の日本で福祉国家を展望する」シンポジウムが、明治 大学リバティーホールで行われ、二七○人が参加しました。井上英夫さん(金沢大学教授)、後藤道夫さん(都留文科大学教授)、渡辺治さん(一橋大学名誉教 授)らが報告。震災後、これまでの大企業優先の社会形成を続けるのか、大きな社会保障による福祉国家型社会の形成をめざすのかを提起しました。(安丸雄介 記者)

 藤末衛全日本民医連会長が開会あいさつを行い「東北は全国平均の半数しか医師がいない医療崩壊、超高齢化の状態で被災しました。医療・介護の現物給付と連携、受療権・健康権の確立を」と提起しました。
 シンポジウムでは、井上氏が、「憲法二五条は国民の生存権と国家の生活保障増進の義務を規定している」とし、これまでの社会保障改悪の流れを「憲法違反」と批判しました。
 また同氏がとりくんだ被災地調査の結論として、「住み続ける権利」の新たな確立と、そのために住み続けられる地域づくりが必要だと主張。衣食住や職業・ 雇用を保障する福祉国家型施策で農林漁業などの一次産業の復興が必要、と語りました。地域に住み続けるための高台移転の議論も「住民の自己決定」が重要だ と強調しました。
 後藤氏は、「被災地では生活が落ち着く見込みがない震災直後の時期からハローワークが満杯になった。失業・休業保障が信用されていない」と述べ、現在の 社会保障の政策論議を「財政的余裕があるかどうかからスタートする間違った議論が多い」と指摘。社会保障は財政に関係なく「必要充足・応能負担」の発想で 構築するのが当然で、財源についても企業が社会保障拠出を負担する原則を主張しました。
 渡辺氏は原発事故と震災の深刻化の原因を、(1)利益誘導型政治が地方衰退を隠蔽させつつ財政危機を起こし、(2)財政危機を口実に構造改革・市町村合 併で医療・介護や公務員リストラが進んだ中で、震災と津波に襲われたため、と主張しました。
 さらに、原発事故の背景は、チェルノブイリ事故などで安全基準が高まっているのに、原発の施設改良がコストに合わないとして行わなかったからだと指摘しました。
 そして、政府が構想する復興計画は震災を追い風にした火事場泥棒的な構造改革型復興計画(経済復興にTPP・水産特区・道州制、財源に消費税増税)であり、むしろ社会保障財政も削減するもの、と批判。

 研究会は「社会保障基本法」と「社会保障憲章」を草案し、今後の対抗軸に原発政策転換を前提として、福祉国家型の復興を提起しました。「所得に関わらず 基本的に必要な公的保障は同レベルで受けられることと、医療・介護などの基礎的社会サービスの現物給付、ナショナルミニマム保障の整備が必要」という点も 強調しました。

(民医連新聞 第1505号 2011年8月1日)

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