医療・福祉関係者のみなさま

2011年7月18日

フォーカス 私たちの実践 医療活動委員会のとりくみ 大阪民医連 地域から熱中症による死亡者を出さないための調査報告2010

 大阪民医連は二○○四年から毎年、加盟事業所を利用している外来・在宅患者さんのうち六五歳以上の独居・老夫婦世帯を対象(表 1)に、熱中症の調査を行っています。居室の室温を計り、生活実態把握と安否確認、緊急対策を行政に提起することが目的です。七回目になった昨年の調査結 果を紹介し、今年の留意点を考えます。

「災害」としての熱中症

2010年地域調査

◆調査期間
・2010年7月26日~8月8日

◆訪問対象
・570人
・加盟事業所を利用する65歳
以上の在宅・外来患者

 昨年の全国の熱中症被害の状況は、一○年報道では、五月三一日~九月一二日までの 救急搬送数が五万四三八六人でした。今年六月には、厚労省が二○一○年の熱中症死亡者が一七一八人と発表。家で亡くなった人が四五・六%、詳細不明が四 五・一%で、年齢別では六五歳以上が七九・三%と大半を占めました。「高齢になるほど、死亡率が上昇する傾向がある」と報告されています。
 死因不明者なども含めると、さらに数は増え、まさに「災害」として対策すべき被害状況です。

多くの高齢者が高温環境に

 大阪民医連の調査では、室温が三○度以上あったお宅は約七○%(三八一件)にのぼりました。室温が外気温より高いケースもあり、多くの高齢者が高温環境にいると分かりました。
 また、クーラーの使用状況を調べると、「所持しない」が八五件。所持していても一日の使用時間は二時間未満との回答が、九八件でした(表2)。「クーラーが嫌い」などの理由も少なくありませんでした。防犯や隣家の室外機の熱風を防ぐために、窓や入口を閉めているケースも多くありました。
 さらに、認知症患者や介護度が高い人は、クーラーの操作が分からない場合が多いことも判明。使用していても適温が分からず冷え過ぎるなどの問題がありま した。例えば、Aさん(女性・九一歳、独居)宅は訪問時の室温が三一・五度。認知症(自立度IIb)があり、時々クーラーも使用しますが誰かが促さないと 使いません。府営住宅在住で高齢者独居も多く、周辺からの配慮も必要でした。

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熱中症は自己責任ですまない

 高温環境を改善するには、クーラーの適切な使用が不可欠です。しかし、クーラーのない人は独居が六○世帯、老夫婦が九世帯という状況。経済状態を見ると住民税非課税が一四世帯、生活保護受給が四四世帯と、低所得者層が多いことも分かりました(表3)。
 Bさん(女性・八五歳、独居)宅を訪問すると室温が三二度あり、扇風機が故障して使えていないことが分かりました。低年金で持ち家もありませんが、生活 保護も受けずに暮らしていた人です。見かねた職員が中古の扇風機を探して提供することになりました。
 経済面も含め、健康状態や家族構成、住環境などの問題で個人的に対策ができない人も多くいました。熱中症対策は自己責任ではすまない問題です。
 同時に、暑さが認識できない人がいるため、安否確認のしくみ、介護・福祉の地域ネットワークづくりの課題も見えてきました。各事業所では見守りなどのさ まざまな対策を行っていますが、避難所設置なども含め、行政の支援が必要です。

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今年の注意点は

 本調査をまとめた大阪民医連事務局の小谷朋さんに今年の熱中症対策の注意点を聞きました。
 今年の夏も酷暑との予測が出ました。節電が強調されていますが、エアコンが使える環境にあれば、がまんしないことが重要です。特に明け方まで気温が下が らず、熱帯夜が続く場合では、充分な睡眠がとれず、さらに体力が落ちると指摘されています。
 大阪民医連が大阪府に熱中症対策を求めたところ「熱中症の注意喚起を広報やホームページでお知らせしている」という回答でした。今年の調査では、行政の 情報をどんな形で受け取ったかを聞く項目を追加しました。
 また、同仁会ではテレビの地デジ化対応も独自に調査予定です。昨年、熱中症の怖さをテレビで知った人が多く、本調査は重要なとりくみになると思います。

(民医連新聞 第1504号 2011年7月18日)

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