医療・福祉関係者のみなさま

2011年7月4日

フォーカス 私たちの実践 口臭測定器を導入して 福井・光陽生協歯科 歯周病予防の動機づけ 健康教室にも出番が

 第一九回歯科学術・運動交流集会での発表を紹介します。今回は口臭測定器を導入し、歯周病予防を進めている経験です。歯科衛生士の近藤友香さんの報告です。

 口臭に関心をもつ人が増え、当歯科にも相談が増えています。口臭が発生する原因と、その除去について患者さんに説明することが求められ、当歯科では二〇〇八年に口臭測定器を導入しました。
 この測定器は、臭い物質の特定まで可能です。硫化水素(卵が腐ったときの臭い)、メチルメルカプタン(魚のような生臭さ)、ジメチルサルファイド(生ゴ ミ様の臭気)を検出します。人によって原因に違いがあるので、それぞれに合わせた治療や指導を行っています。
 測定は初診(再初診)内で一回無料です。また、治療の終了時などに患者さんが希望した場合、測定します。
 口臭の測定は、歯周病の治療や予防の動機づけにもなります。事例をもとに報告します。

歯石除去し歯磨き指導

 Aさんは二五歳、男性で、喫煙習慣はありません。検診を希望し来院しました。 歯科受診は中学生の時以来だと言いました。歯周ポケットの深さは四~五ミリでしたが、歯石が多すぎてしっかり測定できない状態でした。歯肉全体が腫れて、 触れるとかなり出血しました。歯の縁上・縁下ともに歯石が多量にありました。
 この時のプラーク付着率は、五六%と高い数値を示しました。口臭測定の結果は、「明らかに口臭を感じ明確に不快感を感じる範囲」という結果が出ました(下図を参照)。
 Aさんには鏡で確認しながら、バス法(歯磨き方法の一つ)で臼歯まで磨くように指導しました。また、歯石を除去するとポケットの測定が正確にできるよう になり、臼歯部の歯周ポケットは初回の測定値より深かったことが分かりました。
 一回目の検査から一カ月後、二回目の口臭測定の時には、プラークが歯の隣接部と臼歯部に残っていました。腫れと出血には、あまり変化がなく、プラークは 相変わらず多い状態で付着率が三一%。口臭の各ガスの数値は低下したものの、判定結果は一回目と同じく変わりませんでした。
 縁下の歯石除去後、全体的にポケットが浅くなり、出血は減少していました。しかし、プラーク付着率は三七%でした。歯間にプラークが溜まるためと考え、 歯間ブラシを使用してもらうことに。また、舌苔(ぜったい)の除去もすすめました。
 その約二週間後、プラーク付着率は二○%へと下がり、患者さん自身も歯肉の腫れと出血が減ったと自覚していました(二回目の検査から三カ月後)。測定す ると口臭のガスの値もそれぞれ下がり、「口臭はあるが、ほとんど臭いを感じない範囲」になりました。

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スコアで確認、納得できる

 Bさんは七〇歳男性。喫煙習慣はありません。「口臭が気になる」との主訴でし た。確かに口臭が強く、舌苔が多い状態でした。プラーク付着率は二五%で高くはありませんが、歯間にプラークが集中していました。口臭測定すると各ガス量 は多く、不快を感じる口臭との結果が出ました。
 そこで、歯磨き指導で歯間ブラシと舌ブラシをおすすめしました。約二週間後、自覚していた口臭も改善し、家族にも口臭を指摘されなくなったとのことでし た。口臭測定もほとんど臭いを感じないという結果が出ました。

 測定結果を目で見れば、口臭のレベルを確認でき、また口臭の原因も分かることで対応がしやすくなります。患者さんの理解、納得も得やすいと感じます。測定結果を見ながらだと衛生士との話も広がり、歯磨きのモチベーションもアップするようです。
 地域の健康教室でも口臭測定器を使うことが増えました。歯周病の治療や予防を地域で進めていきたいと考えています。

(民医連新聞 第1503号 2011年7月4日)

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