医療・福祉関係者のみなさま

2011年6月6日

相談室日誌 連載328 「誰のため?」新人SWが教えられたこと 川原三佳(北海道)

Aさんは一人暮らしの九〇代女性です。今年二月に自宅で動けなくなっていたところを家族が発見し、当院に搬送されました。診断は第九胸椎の圧迫骨折でした。
 Aさんは、入院前から身の回りのことはすべて自分で行っていました。SWとの面談では「早くよくなって、自分の家に帰りたい。自分のことは自分でやって いきたい」と、退院後も一人暮らしを続けることを望んでいました。家族は、Aさんのこの希望には反対で「入院前とは同じように動けない、一人暮らしは無理 ではないか」「だれもいないところでまた転んでしまったら…?」と、心配していました。家族の思いは、施設に入所して安全に暮らしてほしいというもの。し かし、いくら家族が説得しても、Aさんはあきらめません。
 退院後の方向性が定まらず、家族と面談を重ねるなかで私も、Aさんの一人暮らしはとても難しいもののように思えてきました。
 SWの先輩にAさんの援助方向を相談しました。先輩からは「誰のためのソーシャルワーカーで、援助対象は誰なのか」と問いかけられました。その時初め て、自分が誰のために支援を行おうとしていたのかわからなくなっていたことに気づきました。それまでAさんのできないことばかり注目してしまい、毎日病院 でリハビリに励む姿や、本人の強さに目が向いていませんでした。
 Aさんが決めた「一人暮らし」という選択肢。それを実現するため、家族に本人の思いを共有させることを目標に支援を始めていきました。
 安心して生活するため自宅の環境を整えていきました。住宅改修を行い、入院前は利用していなかった、福祉用具の貸与やホームヘルパーの利用も勧めました。そして、現在、一人暮らしをしています。
 私は新人のSWです。今回のケースを通して、援助を行う上で何が大切かを考えました。先輩職員に教わったことを常に忘れないように、今後も患者さんたちに接していきたいと思います。

(民医連新聞 第1501号 2011年6月6日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ