医療・福祉関係者のみなさま

2011年5月23日

相談室日誌 連載327 高次脳機能障害患者への援助 内田 淳子(徳島)

Aさんは独身の五〇代男性。昨年八月、脳内出血後のリハビリのためB病院から当院の回復期病棟へ転院しました。
 Aさんは大学卒業後、運送会社などで働いていましたが、ストレスによる胃潰瘍で退職。一〇年ほど前から警備員のバイトで生活していましたが、脳内出血で 倒れ、救急搬送されました。当時は無保険、入院を機に同居していた弟の保険に加入しました。「元気になって退院し働きたい」と本人も希望を語りました。弟 さんも「ゆっくりでいいから自分で働いて、生活を成り立たせてほしい」とのことでした。 
 Aさんの利用可能な社会資源に、高次脳機能障害で精神障害者保健福祉手帳が該当することが分かりました。この手帳の発行には精神科の診断が必要でした。 しかし当院には精神科がないため、徳島大学病院高次脳センターのコーディネーターの助けをかりて、主治医に診断書を作成してもらいました。
 今年、一月初旬、Aさんと退院後の生活の話し合いをしました。当初は、弟宅に戻ることを考えていましたが問題が発覚。食事はもともと弟一家とは別で、A さんは自炊していたのです。倒れた後は、買物や調理が難しくなっていました。脳血管障害や脳外傷で脳に傷が残ったために「いくつかのことを同時に行えな い」「新しい出来事が覚えられない」「予定を立てて行動できない」などといった認知障害(記憶障害や社会的行動障害など)が現れるのが高次脳機能障害なの です。
 弟家族も食事の準備までは援助できず、退院の道は断たれたと思われました。そんな中、退院先に当院関連のケア付き住宅(食事と二四時間見守りあり)に空 きがありました。見学すると気に入り、入居を決めました。障害者就労施設の利用も申請しました。
 また、入院中から生活保護の受給も検討していましたが、弟と同一世帯では難しく、施設に移ってから申請。現在は障害者の就労支援施設に毎日通ってパン作りをしています。
 今回のケースは本人や弟さんの希望に少しでも近づけられるよう援助しました。また各機関や他職種との連携の大切さを学びました。今後も患者さんに寄り 添った相談活動ができるよう、努めていきたいと思います。

(民医連新聞 第1500号 2011年5月23日)

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