医療・福祉関係者のみなさま

2011年5月23日

民医連Dr.9人 福島駆ける 3日で12ヵ所 住民学習会 被爆の不安受け止め――

 全日本民医連緊急被曝事故対策本部の医師九人が五月三~五日、福島入りし県内一二カ所で住民向けに原発事故の集中学習会を開きま した。福島第一原発の放射能漏れが収まらず、特に小さな子どものいる世帯は不安が高まっています。医師たちは住民の気持ちを正面から受け止め、被曝の影響 と対策についてわかりやすく説明。約一六〇〇人の参加者は熱心にメモをとり、うなずきながら聞き入りました。(新井健治記者/写真・稲原資治)

幼子を抱え母親が

 福島民医連や各医療生協、復興共同センターなどが主催。急な開催で告知も限ら れていましたが、行政などの協力もあり、道の駅や集会所、農協本店、病院など各会場はいずれも超満員。乳幼児を抱えた若い母親や若者の姿も目立ちました。 講演後は次々と手が挙がり、「子どもの服に付いた放射能の落とし方を教えて」「給食は安全なのか」「白血病や甲状腺がんが心配」「井戸水は飲んでも大丈夫 か」などの質問が。農家が多いため、「コメはつくってもよいか。シイタケは?」と農業に関する質問も多く出されました。
 講師は原爆被爆者を診療したり、原爆症認定集団訴訟を支援してきた医師で、全国から駆けつけました。学習会の内容は放射線の種類と特徴、急性障害と晩発 性障害、がんになるリスク、年齢による感受性の違い、なぜ、同じ市内で放射線量が違うのか、住民の長期にわたる健康管理の必要性などです。
 福井民医連の平野治和医師は伊達市で講演。同市は原発から四〇キロ以上離れていますが、市内の小学校は放射線量が高く、校庭の表土を削ったばかり。「二 歳の子どもがいますが、避難しなくても大丈夫ですか」と聞いた母親も。「子どもを持つ親の気持ちは察するに余りある。医師の立場で原発事故と健康への影響 を知らせることが自分の使命」と平野医師。福井にも原発が一四基あります。
 二本松市で講演した本田英雄医師は長年、長崎で原爆被爆者を診てきました。講演後に「私たちはヒバクシャなのでしょうか」と質問した住民が。「住民の悔 しさ、怒り、置かれた状況の重大性を痛感した。何の落ち度もないのに、一方的に被害を受けた点では、原爆被爆者と共通する。住民には健康管理の実施、医療 費自己負担の免除など、国が全責任をもつべき」と強調します。

いっしょにたたかう

 参加した住民は「事故でストレスがたまる一方。さまざまな不安・疑問を受け止めていただき、感謝している」「お医者さんなのに、偉ぶってなく、とても好感がもてた」「正しく恐れ、正しく対処することを学んだ」と話します。
 会津若松市で講演した小西恭司本部長は、「私たちは原爆症認定集団訴訟を通じ、広島・長崎の原爆被爆者とともにたたかってきました。被爆者に寄り添う姿 勢が、原発事故の被災者にも通じ、共感がいただけたと思う。民医連だからこそ、できた学習会です」と。

生活基盤壊され

 住民の不安は被曝にとどまりません。「いつになったら、地元に帰ることができるのか」「来年は田植えができるのか」など、生活基盤が破壊され、生存権が脅かされる深刻な状況が続いています。
 被曝のリスクは原爆被爆者の追跡調査から明らかになりました。被爆者が亡くなった原因は放射線量の多寡だけでなく、原爆によって家族やコミュニティーを 失ったことが影響していることもわかっています。小西医師は「私たちは原爆被爆者の生活の苦労を知っている。こういう時期だからこそ、原発被災者も家族や 地域の絆を大切にしてほしい」と指摘します。
 原発事故は収束せず、放射線の積算線量は増え続けています。小学校PTAなどから要望が次々来ており、今後も学習会を開きます。

(民医連新聞 第1500号 2011年5月23日)

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