医療・福祉関係者のみなさま

2011年5月2日

フォーカス 私たちの実践 新卒看護師の里親制度 兵庫 尼崎医療生協病院 “里親”のいる診療所に“里帰り” 地域を知り、組合員さんと交流

 この春、民医連では九七〇人前後の新卒看護師を迎えました。尼崎医療生協病院では診療所群と連携して新卒看護師を育てるしくみとして「里親制度」をつくっています。第一〇回看護介護活動交流集会で冨永容子さん(助産師)が発表しました。

 尼崎医療生協は、当院(一九九床)と診療所八つ、訪問看護ステーション五つと老健施設一つを運営しています。新卒看護師の確保と育成は、当法人の重要な課題になっています。

病院と診療所が連携して

 新卒看護師の配属場所は主に急性期病棟です。病院の中でも、特に忙しい部署が新卒 者の育成を担うことになり、新人も教える側もゆとりがないのが現状です。また、技術や知識を教えることだけに必死になる傾向があると思われました。そこで 二〇〇九年度から、新卒看護師を法人全体で応援するしくみとして「里親制度」をスタートさせました。
 この目的は第一に、新卒看護師が相談できる相手を配属職場以外につくり、新人育成の課題を全事業所で共有することです。
 もう一つは、里親と組合員が援助して、新卒看護師が地域のことを知る機会をつくり、患者(疾患)を生活と労働から捉える視点を育成することです。
 具体的には、診療所の看護管理者が新人一~二人の「里親」になり、診療所は「里」として職員みんなでバックアップし、組合員との交流も企画しました。四 月の集合オリエンテーション終了後、部署に配属される前の二日間、「里親」のもとで研修しました。内容は診療所(里)に任せました。さらに配属後も、夏と 秋に「里帰り」を実施しました。
 また「里親」は、会議や入院患者との面会などで病院に来るとき、里子(新人看護師)の職場に立ち寄って声をかけました。里子の事例発表会には、里親が参加し成長を確認しました。

組合員さんとの交流も好評

 〇九年卒看護師は九人です。数人の感想を紹介します。
 Aさんは「里」で、組合員さんから診療所の歴史を教えてもらいました。「力が入って三時間も語ってくれ、医療生協が組合員によってささえられていると実感した。期待をひしひしと感じた」と。
 Bさんは「新人オリエンテーションではじめて採血の練習をしたが、里帰り(診療所)した折に、患者さんが『私の腕で注射の練習をしぃ』と腕を出してく れ、びっくり。患者さんも自分も汗だくで練習した。夏には盆踊り班会で汗だくになった。『これからもがんばってな』という温かい言葉が嬉しかった」とのべ ています。
 Cさんは、「里の健康まつりで、健康チェックコーナーの血圧測定を担当した。慣れている組合員さんに助けてもらった。組合員さんて、すごいなと思った。 入院していた患者さんと里で再会し、入院中と違う生きいきした表情がうれしかった」とのべています。

民医連看護を語る「里親」を

 振り返ると、「里帰り」の機会が三回では少なかったと思われ、新卒看護師と「里 親」が親密な関係を築くのが難しかったようです。一方、新人看護師は「ホッとできる時間だった」と感想を寄せており、里親をはじめ他職場の職員との交流 や、組合員や患者との地域での関わりが好評でした。
 また、診療所だけでなく訪問看護ステーションも、民医連の看護を語り「里」の役割が担えると思われました。そこで、二〇一〇年度は、訪問看護ステーショ ンと診療所がペアで「里」になることに。里帰りの回数も増やし、五月、七月、八月と秋から冬にも一回実施にしました。法人の看護管理者会議では、新卒看護 師と関わりを強め「民医連の看護を語り尽くす!」ことを確認し合いました。
 民医連・医療生協の看護を語り継ぐことが、いま一番求められています。未来を担う新人看護師の成長を職員・組合員さんみんなで見守っていきたいと思います。

(民医連新聞 第1499号 2011年5月2日)

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