民医連新聞

2002年7月11日

“両立させたい”「良い医者」と「結婚」と… 女子医学生共通の願いにこたえてシンポジウム

 医学生実習の季節を控え、全国の院所で医学生むけのとりくみがはじまっています。東京ほくと医 療生協では6月22日、女子医学生を対象にした企画を開きました。学生15人、民医連内外の医師や研修医25人が参加して、大成功。さらにこの参加者の一 人が研修を決意するという、うれしいニュースも飛び込んできました。(木下直子記者)

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 企画は「女性医師・女子医学生のための地域医療、医学教育をめぐるシンポジウム」。記念講演の村重直子 医師(アメリカ・ベスイスラエルメディカルセンター)、シンポジストの大西恵理子医師(アメリカで家庭医として開業中)、もと職員(保健師)で日本共産党 区議の山崎泰子さんら3人の外部講師のほか、民医連からは4人の女性医師がシンポジストとして発言しました。
 同法人の西村真紀、大野毎子両医師が、「日本で家庭医になること」として、これまでの歩みや、結婚、出産、子育てと、家庭を持ちながら働く日々を報告。 現在3年目の伊藤こずえ、平山陽子両医師が、医師をめざし、民医連、ほくと医療生協で研修を決意するまでの、それぞれの自分史と、研修生活を語りました。
 「講演」、「シンポジウム」で四時間という長いものでしたが、女性特有の社会的なハンデにも負けず、いきいきと働く人たちの生の声は、聴く者に時間を感 じさせません。共感の声や笑い、質問でも活発に手があがり終始積極的な雰囲気ですすみました。
 しかも、驚いたことに、この場に参加した学生15人のうち、これまでつながりがあった学生は1人だけ。初めて民医連の企画に参加したという人が11人。 メーリングリストやホームページ上での宣伝を手がかりに集まってきた人たちばかりです。

メーリングリストなどで広く発信“初参加”が11人も

「準備は入念に行いました」と、「仕掛け人」の藤沼康樹医師(生協浮間診療所長・北部東京家庭医療学セン ター長)。医学生の関心の高いテーマ選びと、「学べる内容」にこだわりました。「たとえ民医連を苦手だと思っている人でも、そのバリアを越えて『聴きた い』と言う企画にしたかったんです」。
 医師になる女性は年ねん増えてきました。近い将来医師の男女比は逆転するという予測も。しかし多くの医学生が女性特有の悩みー結婚後、家庭と仕事の両立 は可能なのか? 子育てしながらやりたい医療を追い続けられるか?ーを抱えます。今回はまさにその要求に応えるものとして、成功しました。「こんな企画 は、日本中を探しても無かったんじゃないですか?」という参加者の声が象徴的。
 グループに分かれて行ったディスカッションでも、結婚や産休、夫婦間の家事分担など、具体的な話題や質問が続出しました。
 都内の医学部に通う6年生のAさんは、今回の企画に参加して、卒業後の進路をほくと医療生協に決めました。女性医師たちが家庭と仕事の両立の難しさに立ち向かい、自己実現しようとしている姿を間近にしたことが「決め手」に。
 また、参加者の中には、後日、夏の実習を申し込んでくる人も。
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 ほくと医療生協では、医学会のメーリングリストで、医師や研修医が積極的に発言し、日常的に医学生との接点をつくってきました(現在4カ所に参加)。
 「良い医師になるためにどうしたらいいか?と、悩んでいる医学生は増えているのではないか?」藤沼医師は医学生との交流を通じて得た実感を語ります。
 「彼らには『何科にすすみたい』ではなく、『まともな医者になりたい』という要求がある。『やりがいがあって、意義があって、良い医者になれる所はどこか?』を模索しているんです」。
 参加を希望した学生は総勢23人にのぼり、会場も急きょ広い場所に変更に。村重直子医師は、レジデントとして体験したアメリカ医療の問題点を報告。治療 内容が病状ではなく加入保険の種類で決まること、医療の「専門分化」や「訴訟社会」の弊害など、リアルに。大西恵理子医師は渡米し開業するまでの経緯と開 業医の生活を、山崎泰子氏は、家庭も大切にしながら、社会で活躍しようと激励しました。

(民医連新聞2002年07月11日/1281号)

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