医療・福祉関係者のみなさま

2011年3月7日

国保 再生のために (3)保険料 「旧ただし書き」全国統一で弱者への負担増の恐れ

 国民健康保険料の計算方式を、「旧ただし書き」方式に全国で統一する方針を政府が打ち出しています(二〇一一年度税制改正大綱)。一三年度実施をめざしていますが、この計算方式では、所得の低い加入者を中心に負担が重くなります。

 国保加入者に請求される国保料(税)の額は、所得に応じた「所得割」と、被保険者全員にかけられる「均等割」を合計したものです。この「所得割」部分の計算方式が現在、「住民税方式」と「旧ただし書き方式」の二種類あり、運営する自治体によって違います。

 二〇一〇年度、「住民税方式」による計算方式の自治体は、大都市を中心に全国に三七区市町。加入者は三三三万世帯。

 住民税方式は、住民税に基づく保険料で、所得から各種控除(基礎控除・扶養控除・配偶者控 除など)を引いて計算されますが、政府が統一しようとしている旧ただし書き方式では、各種控除が適用されません。所得の低い世帯や障がい者のいる世帯、家 族数の多い世帯など、控除を受けている世帯に負担増が集中します。

「保険料が4倍になった」

 典型的な事例が東京・武蔵野市に。同市は二〇一〇年度、保険料の徴収方式を旧ただし書き方式に変更しました。「保険料が前年の四倍に上がった」…こんな相談が同市の社保協にシングルマザーから寄せられました。
 市から届いた二〇一〇年度の保険料は二七万四〇〇〇円、前年度は六万四八〇〇円でした。「前年度から所得は変わっていない。間違いでは?」と相談者。二 人の子どものうち一人が障がい児で、前年度まで保険料に反映していた障害者扶養控除が、計算方式の変更で考慮されなくなったためだと判明しました。「保険 料を払うと生活できない」と相談者。減額などの手だてもなく、現在分割で支払っています。
 「武蔵野市の国保全体でみると、保険料が上がった世帯は一五%です。しかし、影響を受ける層が問題」と、相談を受けた橋本しげき市議(共産党)。「保険 料が二倍以上になったという相談は他にもあり、障がい者のいる世帯という点で共通していました。控除で配慮されていた層へのささえがなくなった形です」。
 さらに、世帯の年間所得をみると、保険料が上がった世帯が、「一〇〇〇万円以上」に加え、「所得なし」「六〇万円未満」「一〇〇万円未満」と低い階層に 集中。総所得一〇〇万円未満世帯向けに経過措置(一〇年度二〇%、一一年度一〇%を所得から控除し保険料算定)がとられますが、来年四月にはその措置もな くなります。
 東京二三区でも今年四月から、保険料が旧ただし書き方式に変更され、一人あたり五一八〇円のアップに。二年の経過措置を設けますが、それでも値上げです。

 問題はさらに。政府は自治体が独自の軽減措置を行う際の財源を国保財政から出せるよう、国 保施行令を改定する方針。現在、減免は税金(一般会計)から出すことになっています。低所得者への軽減を国保財政から出せば、その分がまた全体の保険料に 上乗せされる悪循環になりかねません。(木下直子記者)

(民医連新聞 第1495号 2011年3月7日)

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